「熟年のための遊技機」という発想

遊技産業の視点 Weekly View

 □ホールマーケティングコンサルタント、LOGOSプロジェクト上級研究員・岸本正一

 「音がうるさい」「いろんな場所が光って目が疲れる」「よく分からない大げさな映像を見せられても疲れるだけ」など、これらは、私がいままでに数えきれないほど実施してきたプレーヤーアンケート結果から見えてくる「熟年パチンコプレーヤーによる現在のパチンコ機に対する最大公約数的見解」だ。

 遊技参加人口の回復は業界の悲願ではあるが、現在のメイン顧客層である熟年プレーヤーからこのように評されていては、若年層の遊技参加が進まない現状で、さらなる市場縮小も懸念される。このような状況を打破するためには、少なくとも熟年プレーヤーが、今後も遊技を継続するだけの面白さを持ち合わせた遊技機の提供が必須となる。

 さて、クリント・イーストウッドの監督・主演映画「スペースカウボーイ」と、北野武監督映画「龍三と七人の子分たち」に共通するのは、世の中から「年寄り」と呼ばれる主人公たちが活躍するところだ。前者は地球の危機を救い、後者はオレオレ詐欺を繰り返す若者を退治する。いずれも、若者にはない「年寄り」の経験や勘、あるいは度胸というものが、映画の面白みとなっている。

 そこで1つ提案がある。現在のパチンコ機も20代や30代の技術者ばかりに開発させるのではなく、年齢を理由に一線を退いた腕利きの技術者を呼び寄せて「熟年用パチンコ機」を本気で開発してみたらどうだろうか。パチンコ版「スペースカウボーイ」だ。

 考えてみれば、開発者の世代交代は「熟年者たちのノウハウ」を置き去りにしてきた可能性もある。そのノウハウを補うために次世代の開発者たちがデジタル技術を駆使した開発競争に邁進(まいしん)しているとすれば、確かにパチンコ機は昔と「別モノ」になる。それは進化と呼べるかもしれないのだが、その「別モノ」に期待通りにファンが付いてきていない現実に、業界はいま直面している。無論、開発環境も異なるし、社会環境や経済情勢が当時と違うといえば終わりなのだが、やってみるだけの価値がある試みではなかろうか。

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【プロフィル】岸本正一

 きしもと・しょういち 1963年生まれ。元SEの経験を生かし、遊技場の集客メカニズムを論理的に整理・研究する傍ら、全国のパチンコホールを対象にコンサルティングを行う。雑誌への連載やテキストの出版、セミナーでの講演なども手掛ける。オベーション代表。