探求学習で日英バイリンガル育成 関西国際学園・中村久美子社長

 

 学校教育法の適用を受けない独自のインターナショナルスクールを運営し、日英バイリンガル教育に携わっているのが関西国際学園。現在は関西や東京で12校を運営しており、ゼロ歳から12歳まで約1200人の子供を教えている。創業者である中村久美子社長は授業を通じて「クリティカル・シンキング(批判的思考)が培われていくようにしていきたい」と語る。

 ◆「ないなら自力で」

 中村さんは学生時代、米国で学んだ。この経験を踏まえ長男は、日英バイリンガルに育てたいと考えていた。その思いがかなうような幼稚園に通わせようといくつか見学したが、満足できる施設はなかった。例えばインターナショナルスクールは、日本語や日本文化の教育がすっぽりと抜け落ちていた。英語を発達させるには、日本語を確立することが最低必要条件。「それならば自分でつくろう」と決めて設立したのが関西国際学園だ。

 学園は法律上、義務教育に当たらない私塾。0~2歳の乳幼児部では教師1人に対して3~6人、幼稚園部と6~12歳の初等部は外国人と日本人スタッフによる2人担任制で、1クラス当たり20人以下の少人数制を採用している。

 日英2カ国語によるカリキュラムは2015年に、世界的な教育課程「国際バカロレア」に認定された。バカロレアは「自ら考え行動できるような人を育てる世界トップレベルのプログラム」(中村社長)。子供たちの国際的感覚や学力、教師のレベル、親の子育てに対する考え方などを厳しく判断した上で認定する。

 カリキュラムの特徴は教科融合型。例えば「海」というテーマを設定したら、その中に国語、算数、理科、社会の要素を盛り込んで授業を行い子供たちが興味を抱くところへと誘導していく。テーマはバカロレアで決まっているが、カリキュラムを作成するのは先生自身。「こうした探求学習は難しいので、教師の高度なスキルが必要」(中村社長)という。

 ◆常に「なぜ」を考える

 6年生になれば人権問題も取り扱う。東大法学部卒のスタッフがいるので模擬裁判を実施。実際に裁判所に行ったりするなど体験型授業にも力を入れる。

 プログラムは6週間単位で「本当にそれでよいのか」「なぜ、どうして」と常に考える癖を身につけられるようにすることを目的とする。各プログラムの終了時にはプレゼンテーションを行い、何らかのアクションを起こしていく。例えば「人体」というテーマの時は「太るとこんな弊害が生じる」「体によい食べ物はどのようにして摂取するのか」といった事例を示すポスターを作成したりした。

 今後は東京での事業を推進。現在は西麻布(港区)など3カ所で運営しているが、10校を当面の目標に掲げる。また、中等部と高等部を開設することによって内部進学も可能にする考えだ。これによって、国際社会に貢献するリーダーの育成を目指していく。(伊藤俊祐)

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【プロフィル】中村久美子

 なかむら・くみこ 米サンフランシスコ大を中退。松下電器産業(現パナソニック)、大手英会話学校を経て2001年に関西国際学園を設立、現職。50歳。神戸市出身。

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【会社概要】関西国際学園

 ▽学園本部=大阪市阿倍野区阿倍野筋1-5-1 あべのルシアス7階

 ▽設立=2001年9月

 ▽資本金=1000万円

 ▽従業員数=250人

 ▽事業内容=インターナショナルスクールの運営