来週から総会本格化、本気度見極め 企業統治改革の深掘りが焦点に
3月期決算の上場企業の株主総会が来週から本格化する。昨年6月に東京証券取引所の「コーポレートガバナンス・コード(企業統治原則)」の適用が開始されてから1年が過ぎ、社外取締役の選任が進むなど、形式面は整いつつある。一方、会計や製品性能をめぐる相次ぐ企業不祥事にみられるように、実態はまだ追い付かない状況だ。緒に就いた企業統治改革の流れを加速できるかが焦点となる。
複数選任増えるか
「昨年は企業統治原則の適用開始など多くの話題があった。今年は、その流れを深掘りして実効性を高められるかが問われる」。大和総研の吉川英徳コンサルタントは今年の株主総会の意義についてこう話す。
3月期決算の上場企業の株主総会が最も多く開かれるのは今月29日。ただ東証の集計では、全体に占める割合を示す集中率は約32%と過去最低となる見通し。企業統治原則が「日程の適切な設定を行うべきだ」と分散化を求めていることなどが背景にあり、企業が株主にとって議決権行使がしやすくなるよう歩み寄っている現れとも受け取れる。
企業統治改革の要の一つとされているのが、外部の目線で経営をチェックする社外取締役の活用だ。子会社のトップ人事をめぐる確執が表面化したセブン&アイ・ホールディングスでは新体制発足で社外取締役が重要な役割を担うなど、最近は存在感を高めている。
企業統治原則は上場企業に対し、独立した社外取締役を少なくとも2人以上選任するよう促している。社外取締役の複数選任は大企業を中心に進んでおり、東証が昨年7月に公表した資料では、複数選任の東証1部上場企業の割合は48.4%だった。今年はこの複数選任の企業がどれだけ増えるかが注目されそうだ。
社外取締役の複数選任には“外圧”の存在もある。海外の機関投資家が株主総会の議案への賛否を決める上で影響を与える米国の議決権行使助言会社、インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は今年2月に導入した助言基準の中で、複数の社外取締役を選任しない企業の場合は、経営トップの取締役選任議案に反対するよう推奨している。
不祥事後の姿問う
一方、不祥事によって企業統治のあり方が批判される事例は後を絶たない。
企業統治の優等生とされたはずの東芝は不正会計問題を引き起こし、歴代3社長が辞任する事態に発展。三菱自動車は燃費データの不正発覚で、過去2度のリコール隠し問題を経験したにもかかわらず自浄作用が機能していなかったことが浮き彫りとなった。
こうした企業にとって今年の株主総会は、単に説明責任を果たすだけでなく、「企業風土などで(不祥事が起きた)過去との違いを示せるか」(大和総研の吉川氏)が問われそうだ。
企業統治原則に背中を押される形で、欧米型の企業統治にかじを切りつつある日本企業。ただ、日興リサーチセンターの寺山恵社会システム研究副所長は「海外の機関投資家は、企業側が表面的な対応にとどまっているのか、本気で意識変革をしているのか、見極めようとしている」と語る。(森田晶宏)
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