日台、製造・ITの交流加速 販路開拓にメリット「多くが親日的」

 
ソシオネクストが「コンピューテックス台北」で披露した高精細の8K映像技術=5月31日、台北

 グローバル展開を見据えた日本と台湾の製造・IT業界の交流が加速している。鴻海(ホンハイ)精密工業によるシャープ買収が注目を集める中、富士通とパナソニックのシステムLSI(高密度集積回路)事業を統合したソシオネクストは台湾子会社の設立を足がかりにアジア進出を本格化。台湾側も、低迷するIT産業をテコ入れするためベンチャー企業の育成を強化する方針で、日本市場の開拓に動く企業も増えている。

 強力なパートナーに

 ソシオネクストは欧米やアジアに約20の拠点を持ち、売上高の過半を海外が占める。高い成長が見込める新興市場への攻勢をさらに強めるため4月に台湾に子会社を置いた。

 「グローバル化が進んでいる台湾企業は、中国やインドに進出する際の強力なパートナーになる」と台湾子会社の姉歯伸彦総経理は語る。ソシオネクストは既に、産業用コンピューター分野で世界トップシェアを誇る台湾のアドバンテックと協業、業務用映像事業を強化する計画だ。今後もパートナー企業を増やしていくことで、新興市場にとどまらずグローバルに事業展開していく。

 台湾企業と手を組んで世界市場に切り込むことに、日本メーカーは「互いに販路を拡大できるなどのメリットがある。文化の違いはあっても、台湾企業の多くは親日的だ」(IT業者)と歓迎する声が多く、今後も関係の深化が見込まれる。

 成長の鍵、ベンチャー

 一方、台湾では主力のIT産業が中国向け輸出の不振などで低迷が続き、新たな成長の芽をベンチャー企業に探る機運が高まっている。映像関連機器メーカーのエイテンは、大阪・阪急梅田駅に設置されている4K対応のデジタルサイネージ(電子看板)向けに技術を提供。ロンドンのスポーツバーには、自社開発した照明などの制御技術が採用された実績を持つ。世界に通用する映像技術を武器に、日本企業と提携し本格的に日本市場への進出をもくろんでいる。

 生活用品の分野でも台湾企業の動きが活発になってきた。WISOはホイッスル型の防犯端末「スマートホイッスル」を商品化、「7月には日本の量販店でも発売する」(担当者)という。息を吹き込んで音を鳴らすだけでなく、通信技術でスマートフォンやSNSとも連動して位置情報を送信することで女性や子供を犯罪から守る。治安の問題がたびたび指摘されるようになった日本で、スマホと連動した防犯グッズは大きな需要を生み出すかもしれない。

 台湾では、国際空港もある北部の桃園市に内外から人材や資金を集め、ICT(情報通信技術)の研究開発拠点、ベンチャー集積地にする構想もある。

 ただベンチャーの世界進出には、台湾が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)など広域的な自由貿易圏の枠組みに入るなど環境整備が求められる。“金の卵”が羽ばたくのは容易ではなさそうだ。(宇野貴文)