「美容のプロ」覚悟試されるメーキャップ道具 渡辺ゆき代

講師のホンネ

 私は日頃から、エステティックサロンのスタッフ教育をさせていただいている。サロンで美しく振る舞うエステティシャンの中には、まだまだ精神美が整っていない方もいる。私の教育方針の基本に「自分は美しくあることに全力を注いでいるか」がある。見た目8割で第一印象は決まる。お客さまが「美容のプロ」として一瞬で判断を下すからだ。

 私はクライアントさまに「突き抜けたサロン」を目指していただくため、中途半端な美しさは求めない。髪、メーク、ユニホーム、所作しぐさ。そして、何よりも「精神美」が教育の根本にある。初めてお付き合いする研修で必ず行っているのは、メークポーチの抜き打ち検査。メーキャップ道具と、それらを収納するポーチを含め、全て一品一品を机の上に並べて公開していただく。その並べる「様」を見れば、中身を見なくともおよそ見当はつく。「あー。どうしよう。恥ずかしいなあ」と顔に書いてある。その羞恥心さえないのであれば、この業界にいる意味はないと思っている。一人一人のメーク道具をチェックする。

 目を背けたくなる現実に遭遇することもある。ファンデーション用のスポンジを何年洗っていないのだろうか。きっとカビが生えていて細菌がウジャウジャいることだろう。とても顔に近づけたくない。全ての鏡は曇っており、もはや鏡としての機能はない。メーキャップポーチの中は臭いが漂ってくる勢いで散らかっている。自分を美しくしてくれるメーキャップ道具や、ポーチを清潔に美しく使用できない女性が果たして、他人さまの美容をお預かりできるだろうか。少なくとも私は、そんな方のお客にはなりたくない。

 精神美を語りだせばキリがないが、美容のプロとしての覚悟を確認するため、初回の儀式にしている。ここで共感してもらえないと、この先はない。そして、次の研修には100%の美しさで臨むように伝えると、ビックリするくらいに豹変(ひょうへん)した姿を見ることもしばしばある。たかがメーキャップ道具、されどメーキャップ道具なのだ。ここには「美容のプロ」としての覚悟が凝縮されている。「精神美」の宿るプロ育成は、私自身の使命だと日々感じている。

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【プロフィル】渡辺ゆき代

 わたなべ・ゆきよ 鹿児島県生まれ。美容業界28年。当初はエステティシャンとしてスタートするも、営業力を買われ月間のサロン売り上げ1000万円を出し続けるカリスマ店長となる。美顔器の製品開発にも携わり、その美顔器は特許を取得。日本国内をはじめ海外33カ国に販売展開。現在は美容家として、サロンのプロデュースやコンサルティング、人材育成の講師を務める。