遊技産業の視点 Weekly View

 □ワールド・ワイズ・ジャパン代表LOGOSプロジェクト主幹・濱口理佳

 ■類似する他業種から社会的ポジション学ぶ

 厚生労働省がギャンブル依存に関する調査結果を発表して以来、メディアでも「依存症」という言葉がまるで流行語のように使われ始めた。ネットなどでの一方的な情報流布が加速するなか、その実態に対する知識が伴わない形で認知のみが拡大する現状にある。

 さて「依存症」といえば、アルコール依存症に対して新たな動きが確認された。5月31日に政府がアルコール依存症に対する「基本計画」を閣議決定。依存症当事者や家族が、居住地域で相談から治療・回復まで継続的に支援を受けられる体制づくりを目指す。「アルコール健康障害対策推進基本計画」と銘打ったその内容は、内閣府のHPにアップされている。

 かつてはその存在が「悪」として捉えられていたアルコールだが、現在は飲酒運転や学生による急性アルコール中毒事件が報道されようとも、アルコールの存在自体を否定する世論が巻き起こることはない。つまりアルコール産業が、過剰なバッシングを社会から受けることのないポジションを築いている証左といえる。

 遊技業界では、すでに社会的認知はあるという人々もいるが、実際のところ「認知はあれども質が伴わない現状」であることは、これまでのマスコミ報道を見ても明らかだ。この差は、アルコールをたしなむ人々の数が多い=大衆の嗜好(しこう)品として存在を確立していることが1つと、早い時期からの社会的課題への取り組みと広報にある。遊技業界にもリカバリーサポートネットワークというのめり込みに対する相談機関があり、業界を挙げた支援のもと確実に機能している。だが、のめり込みそのものに対する研究はアルコール業界の依存症研究の歴史には及ばない。活動内容の報告や、防止に向けた広報も然り。この社会的課題に対するスタンスの違いが、世間におけるポジション確立(正当な社会的認知確立)の違いにつながっている。

 いま、世間ではギャンブル依存症(ほぼ対象はパチンコ・パチスロ)が問題視されているが、アルコール業界の依存に対する取り組みや動向把握は、遊技業界の参考になる。また社会的ポジションを確立した成功例として、そこから学ぶことは多々在るはずだ。

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【プロフィル】濱口理佳

 はまぐち・りか 関西大学大学院文学研究科哲学専修博士課程前期課程修了。学生時代に朝日新聞でコラムニストデビュー。「インテリジェンスの提供」をコアにワールド・ワイズ・ジャパンを設立。2011年有志と「LOGOSプロジェクト」を立ち上げた。