ソニー復活へロボット再参入、新たな収益柱に 「事業領域の多様さが強み」

 
経営方針説明会で発言するソニーの平井一夫社長=29日、東京都港区

 ソニーの平井一夫社長は29日の経営方針説明会で、人工知能(AI)を活用したロボットの開発に着手したことを明らかにした。同社は2006年に犬型ロボット「AIBO(アイボ)」の生産を終了したが、AI技術による高性能ロボットの実用化を目指し再参入する。また、ゲーム機用に開発した仮想現実(VR)技術を産業分野にも活用していく考え。AI、ロボット、VRという最先端分野の拡充で本格復活を目指す。

 市場拡大の可能性

 同社は米AIベンチャー「コジタイ」に資本参加して共同開発を進めているが、これとは別にAIやロボットなどのベンチャー企業に総額100億円規模を出資する「ソニーイノベーションファンド」を7月に設立すると発表した。

 平井社長はAI活用ロボットについて「育てる喜び、愛情の対象になり得るようなロボット」と述べた。ソフトバンクが、同様のコンセプトのヒト型ロボット「ペッパー」ですでに一定の需要を開拓している。ソニーが追随することで一気に市場が広がる可能性もある。

 米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の販売不振によって、ソニーは半導体事業の業績が低迷。特に画像センサーが前期に大幅な下方修正を余儀なくされるなど、17年度の半導体事業全体の売上高見通しは、従来の最大1兆2500億円から同8300億円(34%減)に引き下げた。ただ、画像センサーは車載用途などで今後の需要が期待できることから「M&A(企業の合併・買収)を含めて」(平井社長)事業拡大を検討する。

 浮き沈みの激しい半導体事業とは別に、新たな収益事業の柱にロボット事業を据えたい考えで、「ソニーの将来を担う人材育成にもつながる」(平井社長)と期待を示した。

 収益5000億円に自信

 中期経営計画は、最終年度となる17年度に向けて半導体事業の売上高が落ち込む見通しだが、テレビやスマホなど一般消費者向け製品分野の損益改善が進むと説明。5月に世界販売累計が史上最速で4000万台を突破したゲーム機「プレイステーション4」や10月に発売するVR体験ゲーム端末「プレイステーションVR」も収益を押し上げる見通しだ。

 平井社長は「多様な事業領域を抱えていることがソニーの強み。通信業界では(家庭につながる最後の通信回線を)ラストワンマイルというが、ソニーは“ラストワンインチ”でありたい」と述べ、顧客に近い位置で事業展開する姿勢を強調した。

 17年度は、ROE(株主資本利益率)10%以上、1997年度以来20年ぶりとなる営業利益5000億円以上の目標は据え置き「高収益体質への転換」(平井社長)に自信を示した。

 しかし、各事業分野別の収益は為替レートを1ドル=110円/1ユーロ=138円からそれぞれ113円と129円に変更して見直したが、英国のEU離脱問題の影響で為替の先行きも不透明ななか、業績見通しにも不確定要因が残る。