サミー社長・里見治紀氏に聞く 遊技機の多様化に挑戦していきたい

 

 遊技人口の減少など、厳しい市場環境下にある遊技産業。業界では、“大衆娯楽”としての再興を目指し、顧客ニーズの把握や新規顧客の獲得に向けた多様な遊技機の開発を進めてきた。しかし、遊技機の規則変更などの制約もあり、次代を切り開くような“切り札”の創出にはなかなか至らない。顧客に受け入れられ、顧客を呼び戻す遊技とはどういったものなのか。業界再興の一翼を担う遊技機メーカーへの期待は高まるばかりだ。今年4月、業界大手のサミー社長に就任した里見治紀氏に、業界の現況やサミーのかじ取りなどを聞いた。(青山博美)

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 ■新基準の下でヒット商品

 --現在の市場環境をどう見るか

 「遊技産業全体という意味では厳しいといえる。ホール数は1万1000店前後で推移しており、中期的には1万店程度にまで減少する可能性が高い。1990年代には1万8000店もあったことを考えると、市場の縮小は憂慮すべき事態だ」

 --ホールの減少は、遊技機メーカーにどう影響するか

 「ホール数は減少しているが、遊技機の設置台数という面ではホール軒数ほどの大きな減少はない。背景には、ホールの大型化などがある。小規模なホールが閉店し、これに代わって大きな強いホールが生まれているということでもある。こうしたトレンドもあり、市場は寡占化の方向に向かうのではないかと思う。そういう意味では、メーカーにとって、極端に将来を悲観する必要はないといえるだろう」

 「ただ、昨年(2015年)からパチンコ・パチスロ機ともに設計基準が厳しくなった。こうした規制の変更があった場合、慣例に従えば遊技機の導入台数も落ちてくる」

 --メーカーとして、この状況にどう対処するのか

 「サミーは今春、新規制に準拠した新商品としてパチンコ『CR真・北斗無双』を発売。これがおかげさまで高稼働を維持している。これは、新基準の下でもヒット商品は生み出せる、という一つの例だ。メーカーとしては、いろいろ条件は厳しくとも開発の余地はある」

 「プレー単価とプレー時間をどう考えるかでもある。業界はプレー単価が上昇したことでファンを減らしてきたという面がある。こうした中で、いわゆる“1円パチンコ”が普及してきた。かつて多くのファンがいた時代と変わらないプレー単価である程度の時間遊ぶことができるようになっている。プレー時間についてもファンの多様なスタイルに合わせた、短時間でも十分に楽しめるもの、ある程度まとまった時間で遊べるものと多様なラインアップにしていく必要がある」

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 ■健全化伝えるためにも広告規制緩和を

 --問題は、どうファンを呼び戻すかだ

 「昔と同じプレー単価で遊べる環境はできた。しかし、プレー単価の上昇に伴って遊技から離れた“元ファン”にどう訴求するのかが難しい。遊技には広告宣伝に関わる規制もあり、営業拡大を目指した広告が難しい。競馬や競輪、競艇などが大規模な広告を展開している半面で、娯楽であるパチンコが広告宣伝を規制されている。業界は健全化を進めており、現にプレー単価も下がった。これらを伝えるためにも広告宣伝しやすい環境を作っていきたい。今は業界にたくさんの問題があるが、それらときちんと向き合い、解決したら、胸を張って適正な広告が打てるようにしていきたい」

 --市場は激動しているが、こうした中でサミーの現状はどうか

 「昨年11月の副社長就任直後に行われたサミーの40周年式典で、全社員を集めてサミーの新しい目標として『G30(2020年3月期までに営業利益30%以上を目指す)』を掲げ、これを達成し得る筋肉質な会社になっていこうというメッセージを発信した。過当競争の中で開発は常にいいものを追求し、それが行き過ぎていなかったか、最適な組織体制や開発スキームはどうあるべきか、ということなどをあらゆる観点で見直し、事業構造の変革を行っていく。部材の共通化やリユース(再利用)の拡大などを通じたコスト削減、研究開発費の戦略的投下、リユースを考慮した設計などを進めるほか、同業他社との協業によるハードウエアの共通化なども進める。遊技機のローコスト化は、最終的にはファンやホール様に還元されていく」

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 ■ローコスト化でファンに還元 バーチャルからリアルな遊技に呼び込む

 「さらには、遊技機の多様化にも挑戦したい。前述したが、現在の遊技機は短時間で遊べるものが少ない。しかし、昔のファンを呼び戻すとなれば、そうした機種も必要ではないだろうか。例えば、ちょっとした空き時間で手軽に遊べる機械のラインアップがあれば、会社帰りなどでも手軽に遊べるようになる。現在主流の遊技機は、会社帰りにちょっと遊ぶには時間がかかりすぎる。今後、それらも含め、規制の枠内で多様な遊技機の開発を進めていきたい」

 --経営改革や多様な機器開発を進める上でも人材が重要だ

 「サミーでは、新卒の採用に力を入れている。採用面で困窮することは今のところないが、エントリー数は減少傾向にある。これは、このところの少子化に伴う新卒者の減少というよりも、若者の遊技離れ、若いプレーヤーの減少が影響していると思う。サミーの場合、従来からパチンコ、パチスロのファンの立場から志望する傾向が強かった。これは今も変わらない。若者の遊技離れは、長い目でみればボディーブローのように産業動向に影響してくるだろう」

 --ファンも社員も若者の獲得がカギになる

 「若年層の消費意欲の減退については、自動車や酒類など、多くの産業で問題視されている。これは、マクロ的な視点でいえば、経済環境が影響しているのではないだろうか。今の若者は、将来に大きな不安を抱いている。この不安が先に立ち、お金を使わない。かつては若者が消費をリードし、社会も活気に満ちていた。その点、今は経済が成長していないということもあり、マインドも上向かず、気持ちの面でも余裕がない。しかし、手をこまねいている場合ではない」

 「例えば、グループ会社のサミーネットワークスでは、ネット上で遊技機のシミュレーターアプリを展開し、これが若年層、中・高年層を問わず人気を集めている。このいわば“バーチャルな遊技”の顧客を“リアルな遊技”、つまりホールに呼び込んでいけたらいいと思う。“連れパチ”がしやすい環境への変化も進めたい。知人や友人を誘ってホールに出向いてもらおう、という戦略だ。実は遊技の場合、このように誰かに連れて行ってもらったことがきっかけになり、ファンになるケースが多い。地道だが、こういうことにもしっかりと業界全体で取り組む必要がある」

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 ■多くの感動体験を提供

 --これはもはや、メーカーだけの話ではない

 「若いファン層の開拓は、業界全体にとっても大きなテーマだ。人気のある大衆レジャーに再興するためにも、若いファン層を増やしていく必要がある。手軽になった遊技を、多くの人に知ってもらいたい」

 「もちろん、中・高年層のファンも増やしていく。かつてホールは、地域のコミュニケーションの場だった。ホールからは、顧客同士のコミュニティーが生まれた。ホールが、そうしたコミュニティーとしての機能を持つことも、中・高年層のファン獲得には有効ではないか。若いファン層の開拓も含め、ファンとじかに接するホールの活性化は業界の継続的な発展には不可欠だ。新たなファンに楽しんでいただくためにも、業界挙げて遊技機の稼働、ホールへの送集客を支援していきたい」

 --業界にはいろいろな課題がある。この中で、サミーのかじ取りをどうしていくか

 「すでに構造改革のプランを私と一緒に作るチームも立ち上げ、ミッション・ピラミッドという考え方を導入した。これは上位階層からミッション、ビジョン、ゴール、戦略、組織、戦術という順番で構成される戦略ピラミッド。今までのサミーは設立以来受け継がれてきた『社是:積極進取』が強く根付いていたが、これはサミーの不変であり続ける考え方とし『社是:価値観=積極進取』と定めた。その上で、われわれの存在意義として『ミッション』を『感動体験を創造し続ける』とし、『ビジョン』は将来ありたい姿、『業界の革新者たれ~新しいものはサミーから~』と明確にした。『ゴール』は副社長就任時に掲げた『G30』とし、それを実行していくための大方針である『戦略』を明確にし、そして戦略を実行するための『組織』を形成し、一番下に具体的な打ち手である『戦術』を項目ごとに細かく設定。こうした全社的なピラミッドに基づき、各本部がそれぞれのミッション・ピラミッドを作る。それを部や個人へとブレークダウンすることで社員一人一人が担当する組織・役割ごとに自ら行動し、その積み重ねで会社全体のミッション達成に結びつくといった納得感が出てくると思っている」

 「同時に、私自身、社長としては(サミーを)“社員の誰もが誇りに思える会社であり業界”にしていきたい。もともと社員のロイヤリティーやモチベーションの高い企業だが、だれもが自分の職場を誇りに思えるようにしていきたい。そういう組織は、業績などにとどまらず、高い倫理観も有する。これは究極のコンプライアンスでもあるのだ。業績を整え、組織を強め、社会に多くの“感動体験”を提供し続けたいと思う」

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【プロフィル】里見治紀

 さとみ・はるき 明治学院大国際卒、米カリフォルニア大バークレー校経営大学院修了(MBA)。2001年国際証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)。04年サミー入社。取締役、セガゲームス社長などを経て15年副社長、16年4月から現職。37歳。東京都出身。

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【会社概要】サミー

 ▽本社=東京都豊島区東池袋3-1-1 サンシャイン60 29階

 ▽設立=1975年11月1日

 ▽資本金=182億2100万円

 ▽従業員=1330人(2016年4月1日現在)

 ▽事業内容=パチンコ遊技機、回胴式遊技機、アレンジボール 遊技機、雀球遊技機の開発、製造、販売