“持ち運び”が便利な関電の2本継ぎ電柱 敵に「塩を送る」ジレンマも

 
2本をつなぎ合わせるタイプの電柱(関西電力提供)

 “持ち運び便利な”電柱? 関西電力が昨年から、新設する電柱について、従来の1本構造から上柱と下柱の2本継ぎで1セットとする「2本継ぎ電柱」を採用している。高さ十数メートルにもなる長さの電柱を半分にすることで運搬コストが抑えられ、工事の安全性と効率性も高められるという。原発再稼働が見通せない状況で、関電は電線を銅製より安いアルミ製に切り替えるなど送配電部門でも節約を続ける。ただ、電力小売り全面自由化など電力システム改革が進む中で、こうした節約は電力業界に新規参入した「新電力」など敵に「塩を送る」というジレンマを抱えていた。(藤谷茂樹)

 現場の声から生まれる

 「2本継ぎ電柱」は、関西電力が、配電資材を製造販売するグループ会社「日本ネットワークサポート」と共同開発したコンクリート製の柱だ。平成22年に導入し、昨年4月からは電柱の更新時はすべて2本継ぎ電柱を使うことを決めた。関電管内にある電柱約270万本のうち、すでに約2万6千本が2本継ぎ電柱になっている。

 継ぎ手には「フランジ」と呼ばれる方法を使う。配管など円筒形の物体をつなぐ一般的な方法で、円筒形あるいは部材からはみ出すように出っ張った金属の円盤部分を、ボルト10~12本で固定する。

 ではなぜ、わざわざ電柱を2本に分けたのか。関電電力流通事業本部は「電柱を立てる工事の現場から、分割した方が使いやすいという声があったから」と説明する。

 電柱を新たに設置ケースは、主に建物の建て替えに伴う移動、破損による交換で、狭い住宅街などで行う工事が多いという。

 電柱1本の長さは標準的なもので14メートル。積載可能な大きなトラックが設置現場に入れない場合、レッカー車などを使ったピストン輸送が必要となる。さらに、地上約10メートルには電線が張られ、5~7メートルには電話などの通信線もある。これらを避け、電柱を新設することは至難の業だ。だが電柱を2本に分割して運べれば、こうした問題は解消されるのである。

 コスト削減効果

 関電が2本継ぎ電柱の本格導入を決めた背景には、価格の低下もある。通常のコンクリート製の電柱が数万円に対し、2本継ぎ電柱は開発当初は3倍だった。しかし製造工程の効率化などで2倍の水準まで下がった。長期的には、さらに高いコスト削減効果も見込まれる。

 まず、運搬コストの抑制だ。長さが通常の半分と短くなっていることで普通トラックでの輸送が可能になり、大型の特殊な車両を使わない分、経費が削減できる。

 また2本継ぎならば再利用も可能だ。電柱を建て替える際、通常の古い電柱ならば、運びやすさを考えて切断して短くするため、再利用はできない。だが、2本継ぎではボルトを外すだけで短くなり、ボルトをつなげば、ほかの現場で再利用が可能となる。

 これまでに関電が設置してきた電柱は、地形、地盤など現場の状況に合わせて開発しており、長さや強度などで変化を余儀なくされ33種類にのぼった。2本継ぎ電柱の採用にあたっては6種類まで整理し、製造や作業の効率化につながっているという。

 2本をつなぐことで折れる懸念もあったが、それも解決済みという。先端で力をかけて曲げる「曲げ荷重試験」を実施し、結合部分で壊れないことを確認。通常の電柱と変わらない強度を確保した。

 託送料値下げは「敵に塩」!?

 関電の送配電部門は2本継ぎ電柱の新設を進める一方で、昨年11月からは新たに張り巡らす電線を銅製から割安なアルミ製に切り替えるなど、コスト削減に努めている。

 もちろん、関電が収益改善に不可欠とする原発再稼働がままならないことも理由だ。だが、今年4月に電力小売り全面自由化で家庭向け販売が解禁されるなど電力システム改革の進展が大きな背景にある。

 電柱や電線など送配電部門は、電力業界に新規参入した企業「新電力」も電気を送るために託送料を支払い利用する“公共財”と位置づけられる。平成32年には「発送電分離」で、大手電力から送配電部門は分社化され、単体でも事業性を高める必要が生じる。

 さらに、家庭が支払う電気料金のうち、託送料は3~4割を占めるとされる。このため託送料を安くすることが、電気料金の低廉化を目指した電力小売り自由化の成否を握ると言っても過言ではなく、送配電部門には、さらなるコスト削減が求められる状況だ。

 ただ、託送料の値下げは関電にとって、将来的に収入として見込めなくなるうえ、「新電力」には有利な競争環境を与えることになる。節約の努力が、敵に利することになりかねないジレンマが横たわっている。

 それでも関電は「引き続き電力の安定供給を支えながら、託送料の値下げに努めていく」と強調する。『国内最高値』で管内の関西エリアに電気を供給している関電。電気料金を値下げするなど、利用者に利益還元する日はやってくるのだろうか。