関電が宣伝活動再開 「佐々木蔵之介」で決意アピール、大ガスに対抗
関西電力が、テレビなどのコマーシャル(CM)に関西出身の人気俳優、佐々木蔵之介さんを起用し、東日本大震災以降控えていた宣伝活動も再開した。3月に企業価値を端的に表現するブランドステートメントとして、「power with heart(パワー・ウィズ・ハート)」を定めた関電。ブランドステートメントを策定するのは65年の歴史で初めてで、4月からの電力小売り全面自由化を受け、新しい前向きな関電を印象づけ、競争を勝ち抜こうと懸命だ。(牛島要平)
佐々木さんのプロ意識の高さを見習いたい?
「電力自由化という新しい時代、関西電力も変わります」
関電が4月にスタートさせたテレビCMで、白いシャツとジャケットに身を包んだ佐々木さんがそう訴える。「思いを込めて、真心を尽くして、お客さまや社会の力になりたい。エネルギーに新たな決意をのせて。power with heart 関西電力」。
テレビやラジオのCMだけでなく、雑誌、ポスターなどの広告としても展開。ポスターは乗降客の多い大阪の駅ターミナルにも貼り出され、「変わる関電」を強く訴えかけた。
CMを制作した関電広報室の松倉克浩・広報部長は「佐々木さんは京都出身で、関西ゆかりの人。好感度が高いのはいうまでもなく、舞台への強い熱意も、『力強さと優しさ』という関電の目指すイメージにぴったり」と話す。
佐々木さんはスタジオでのCM撮影時、監督の指示に応えてほとんどNGなしで演じたという。広報室の担当者は「佐々木さんのプロ意識の高さこそ、関電が目指す理想像」と感服することしきりだ。
ソフトバンクやスターバックスを参考に
CMの最後に画面に映し出されるのが、ブランドステートメント「power with heart」だ。「まごころと熱意を込めたサービスで、お客さまや社会の力になりたい」との思いを込めている。
策定に当たっては全従業員や一般の電気利用者らにアンケートを実施し、関電への思いや期待するイメージを聞いた。同時に掲げた経営理念やグループビジョンとも合うように、社内で議論を重ね、「ぐっと凝縮して一言にした」(松倉部長)という。
デザインも、柔らかい印象を与えるローマ字の小文字と温かみのある「ウォームグレー」、力強く躍動感のある斜体で「力強さと優しさ」を表現した。「新風」をモチーフにオレンジの曲線デザインを加えて、「変革し続ける」という熱意を込めたという。
ブランドステートメントは、企業の「コーポレートブランド」を一言で表現するもの。通信自由化に対応したソフトバンクや、米大手コーヒーチェーン「スターバックス」などのブランド戦略も参考にした。
松倉部長は「コーポレートブランドは、顧客や取引先に記憶として蓄積される企業の評判。一度打ち出して終わりではなく、全従業員が理解して業務に当たり、お客さんに継続して認識してもらうために地道な努力が必要」と語る。
社長交代でどう変わる…
関電は震災前、女優の黒木瞳さんや小林聡美さんが「オール電化」を勧めるCMなどを流していた。しかし、震災による東京電力福島第1原発事故で、関電もすべての原発を停止。節電を顧客に要請する中、有名人の出演で企業イメージを強く押し出すCMは控えていた。
一方、電力小売りなどをめぐり関電とライバル関係にある大阪ガスはこの間、俳優の大沢たかおさんや女優の上戸彩さん、さらに人気お笑いコンビのロザンをCMなどに積極的に登場させ、イメージアップを図ってきた。
関電が一転してブランドやCMの展開に積極的になった背景について、松倉部長は「電力全面自由化を機に、お客さんに選んでもらえるよう明快な意思表示が必要になった」と説明する。
全面自由化以降、関電から他の電力会社や大阪ガスを含む新規参入事業者「新電力」に切り替えた世帯は約22万9千件(6月10日現在)で関電利用者の約2%。原発再稼働の目途が立たず、2度の料金値上げで全国的にも料金が高い状況が続き、苦戦を強いられている。
こうした中で、関電は4月、「挑む。」と銘打ち、震災後で初となる3カ年(平成28~30年度)の中期経営計画を発表した。
ガスも含めたエネルギーの総合的な展開を強化し、37年度の連結経常利益3千億円以上を目指す意欲的な内容だ。7月からは首都圏での家庭向け電力販売に乗り出すなど、攻めの姿勢を鮮明にしている。
社内の空気も変わりつつある。6月28日の株主総会後の取締役会で、岩根茂樹氏(63)が新社長に就任し、6年ぶりの社長交代となった。岩根氏は総合企画本部長を兼務する副社長として、中計をはじめブランドステートメントの策定に中心的役割を果たした。
“岩根カラー”を帯びた関電が「power with heart」の言葉通り脱皮できるのか、真価はこれから問われる。
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