LINE「陣取り合戦終了」 4カ国・地域に注力、拡大には慎重姿勢

 

 日米で上場を果たしたLINE。15日午後の会見で出沢剛社長は、メッセージのやり取りが中心だったLINEから、さまざまなサービスの窓口となる「スマートポータル」に変革する将来像を示した。一方で、日本、タイ、インドネシア、台湾の4カ国・地域に注力し、それ以外の地域的な拡大には慎重な姿勢だ。今後も成長できるかは、利用者に対するサービスの“深化”が鍵を握り、AI(人工知能)などの技術開発や他社との協業を含めた総合力が問われる。

 「陣取り合戦は終わった」

 出沢社長が強調したのは、メッセージをやり取りするアプリをめぐる地域的な競争で、勢力図が固まり、塗り替えることは難しいという認識だ。

 欧州などでは米フェイスブック傘下の「ワッツアップ」、中国では「ウィーチャット」を展開するテンセントなど、規模でLINEを上回る大手が大市場で覇権を打ち立てた。利用者が新たにこうしたアプリを使う場合は当然、家族や友人の多くが使っているサービスを選ぶため、その地域で高いシェアがある企業に取って代わるのは至難の業だ。

 一方、LINEはタイと台湾でシェア首位、人口の多いインドネシアで2位となっており、これらの地域で優位性を確固たるものにするという現実的な戦略を選んだ。

 4カ国・地域でシェアを高めても、成長性は限定的なのでは-。こうした市場の問いにLINEが出した“解”がスマートポータルだ。例えば、ヤマト運輸と連携し、宅急便の荷物の問い合わせや届く日時、場所の変更をLINE上のやり取りでできるようにした。こうしたサービスを多くの企業と行い、「LINEで何でもできる」(出沢社長)状況にする狙い。ヤマト運輸とのサービスでも使われているAIに関しては、3月末に立ち上げた研究所による自社開発と、パートナー企業の技術活用の両にらみで進める。

 スマートポータル分野での競争激化も必至で、勝ち残りは容易ではないが、出沢社長はフジサンケイビジネスアイの取材に対し、「各国で利用者の声を聞き、サービスに反映してきたノウハウがある」と、LINEの強みを強調した。(高橋寛次)