勢い止まらない“広島庶民の味” 世界の「OTAFUKU」になる日も近い?

 
6月上旬の「お好み焼提案会」で紹介されていた業務用の「お好み焼シート」。これがあればうまく焼ける?!

 広島庶民の味として親しまれている「オタフクソース」(本社・広島市)の勢いが止まらない。地元はもちろん、「コナモン文化の本場」といわれる関西でもソース類は約40%ものシェアを占め、なんとご当地ソースまで全国で展開している。日本を代表するお好み焼きソースの一つとしてすっかりおなじみの存在だが、平成10年には米国に進出。今年はマレーシアに進出し、イスラム教徒にも対応した専用ソースの開発を進めている。「OTAFUKU」がワールドワイドな存在になる日も近い!?(嶋田知加子)

 キャベツの切り方で食感も変わる

 6月上旬、大阪、東京、広島の3会場で、お好み焼き店関係者や流通業者らを対象にしたオタフクソース主催「お好み焼提案会」が行われた。

 大阪会場でのテーマは「change!」。関西のお好み焼き店など約60店舗を調査し、現在のお好み焼きの主流となっている「ふわふわ食感」「とろとろ食感」をどうしたら出せるのかを徹底的に検証した。

 キャベツ一つを例にしても、千切りにした方がいいのか、それとも細かく刻んだ方がいいのかでも、焼きあがったときに食感がまったく異なることを指摘。切るサイズから加水の分量に至るまでの詳細なデータを惜しげもなく披露し、試食も行われた。

 大阪では12回目を数える人気企画で、今年は関西だけでなく周辺地域から2日間の開催で計約1800人が訪れた。関連商品をよく利用するという兵庫県明石市の「お好み焼き一文」オーナー、池澤佳子さんは「4年前から毎年来ています。以前に提案された『うどん餃子(ぎょうざ)』は、うちの名物になっています」と話していた。

 「コナモンの本場」も席巻

 オタフクソースは大正11年、酒、しょうゆ類の卸小売業「佐々木商店」として創業したのがはじまり。顧客の好みに合わせて酒やしょうゆの調合をしていた技術を生かして、醸造酢やソースの製造へと業容を拡大していった。

 ソース類は地元・広島を中心に中国地方では70%前後のシェアを誇り、お好み焼きの定番ソースとして定着。昭和58年にはコナモン文化の本場・大阪に進出し、現在では大阪を含めた関西で約40%ものシェアを占めている。

 今春には「関西限定焼そばソース」の販売に乗り出し、日本コナモン協会の熊谷真菜さんが「だしのきいた甘みのあるやさしい味が、どこか懐かしい気分にさせてくれる」と絶賛するほどだ。

 その一方で、全国各地の名物に合わせた業務用「ご当地ソース」も手がけている。

 北は北海道の「ちゃんちゃん焼のたれ」から、新潟県の「タレかつ丼のたれ」、福岡県の「九州焼ラーメンのたれ」、宮崎県の「チキン南蛮たれ」…などなど。韓国や中国・上海でも同様のご当地ソースを展開しており、全部で15種類もある。

 ソース以外にも、お好み焼きの業務用関連商品を展開している。なかでも、「特製いか天入り天かす天華」は、地元の広島だけでなく、大阪のお好み焼き店などでも人気を集めている。

 日本を制覇し、今度は世界へ…

 創業以来、「自然の恵みに感謝し、天然の味覚をつくる」という健康優先の理念を貫いてきたオタフクソース。ここ数年は海外の普及にも力を入れている。

 平成10年に米国、24年には中国へと相次いで拠点を設けた。今年はマレーシアに合弁会社を設立し、世界に約16億人もいるといわれるイスラム教徒をターゲットにしたマーケット開発に乗り出した。

 イスラム教徒・ハラル対応の専用ソースは、もちろん戒律で禁じられているブタ肉は使用されていない。8月から本格的に稼働する予定で、今後は東南アジアにも注力していくとしている。

 海外のビジネス現場を渡り歩いてきたという佐々木直義社長は「お好み焼きの文化を世界中のできる限り広めていきたい」と意欲を見せる。

 実際に欧州などでもお好み焼きはそれなりに人気で、専門店もあるという。英語では「ジャパニーズ・ピザ」と訳されることもあるお好み焼きだが、「『OKONOMIYAKI』と言っています」と佐々木社長。

 「お好み焼きの世界では日本一になり、全国にお好み焼きを広めた会社だと思っています。次は世界。目標? もちろん世界一です」