女性の起業・キャリア支援にかじ キャリア・マム 堤香苗社長

 

 10万人の主婦ネットワークを使って、リサーチやマーケティング、在宅ワークによる業務請負を行うキャリア・マム(東京都多摩市)は設立から16年。前身の育児サークル発足からは20年あまりを迎える。堤香苗社長は、インターネット時代の女性起業家では草分け的存在だ。「家族や自分自身を大切にできる働き方」を提唱してきたキャリア・マムは近年、主婦ネットワーク活用から歩を進め、女性のキャリア支援に力を入れだした。

 ◆公園ママが原点

 子育て女性が在宅で仕事を請け負う現在の事業スタイルのきっかけは、公園で出会った母親たちにあった。

 フリーアナウンサーだった堤社長は20代を仕事に没頭、30歳を前に出産した。子連れで公園へいくと、同じような人同士で固まる母親集団がいる。障害のある子供がいるなど「みんなと違う」を排除しようとする“空気”に違和感をもった。

 根っこに母親たちの閉塞(へいそく)感があると考える。90年代初頭は寿退社が当たり前。どんなキャリアを築いてきたとしても「よい母親」像だけを求められる。

 「母親だって人生を楽しんでいいはず」。居住地の東京都多摩市で育児サークルを設立したのが1995年のこと。子連れや障害者も歓迎という、サークル主催のコンサートが新聞に掲載されると、家庭に入った女性たちの反響を呼んだ。会員は1500人に膨らんだ。このネットワークを生かすには「主婦から会費をとるのではなく、むしろ主婦がお金を得られる仕組みが必要」と、会社設立を考えたのがキャリア・マムの原点だ。

 ◆主婦力を生かす

 「障害があったり子育て中だったり、フルスペックでない人も働ける場にしよう」

 子育て中の主婦と企業をキャリア・マムがつなぐ「BtoBtoC」モデルをつくった。キャリア・マムの営業やマネジャーが企業から仕事を受注し、これを在宅ワーカーの主婦らに発注する。子供の発熱などの緊急時には、できる人で分担する「チーム請負受託」にした。

 受注するのは企業のアウトソーシング(外部委託)事業が主だ。データ入力や主婦の感覚を生かしたアンケートに店舗レポート、商品やサービス開発に向けた「主婦目線」のマーケティングも評判を呼んだ。

 当時はそもそも、在宅でできる仕事が少なかった。2000年代初頭は、パソコンとインターネットの普及で追い風が吹いたこともあり、会員は全国10万人にまで広がった。

 現在は常時約2000人の在宅ワーカーが稼働。年間3億円超の売上高のうち、半分以上は企業から在宅ワーカーへのアウトソーシング事業によるものだ。

 ◆多様な働き方実現を

 今年は女性活躍推進法が施行され、働く女性を支援する流れは近年、これまでにない盛り上がりをみせている。そんな中、キャリア・マムが新たな主力事業に育てようとしているのが、女性の起業やキャリア支援だ。

 自治体と連携して起業したい女性にノウハウやサポートを提供するセミナーを開催。在宅ワーカー向けの就業支援イベントや講演も行う。

 「これからの10年は、情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)にロボットといったテクノロジーと、育児や障害で働き方に制限ある人とを組み合わせた、新たな仕組みを作っていきたい」と堤社長はいう。

 「仕事は成長の場であり、クリエーティブなもの」と堤社長。だから女性もどんどん挑戦してほしい。ただ、バリキャリだけでなく「ゆるキャリ」的な働き方があってもいい。多様な働き方の実現が、多様な考えや生き方を認めあう「寛容な社会」につながってほしい。そう願う気持ちが、キャリア・マムの原動力だ。(滝川麻衣子)

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【プロフィル】堤香苗

 つつみ・かなえ 早稲田大学第一文学部卒。在学中からフリーアナウンサーやラジオDJなどとして活躍。1995年育児サークル「PAO」設立。97年有限会社アクセルエンターテイメンツを設立し社内にキャリア・マム事業部設置。2000年キャリア・マムを設立し現職。パソコンの普及とともに全国10万人の主婦ネットワークを構築。兵庫県出身。2児の母。

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【会社概要】キャリア・マム

 ▽本社=東京都多摩市落合1-46-1ココリア多摩センター5階504号室

 ▽設立=2000年8月

 ▽資本金=3875万円

 ▽従業員=22人

 ▽事業内容=主婦マーケティング、プロモーション、商品・サービス企画、アウトソーシング、講演・セミナー