モリタ 国内半数を生産 アジア最大級の消防車工場

兵庫発 輝く
シャシレス工程で消防車が生産されている三田工場。秋から1、2月ごろが繁忙期にあたる=兵庫県三田市テクノパーク

 全国の火災現場に出動している半分が、この会社の消防車といっても過言ではない。はしご車やポンプ車の製造メーカー「モリタ」(兵庫県三田市)。同市内の工業団地「北摂三田テクノパーク」の一角には、“アジア最大級”といわれる消防車工場が立地する。敷地面積は東工場と西工場を合わせた「三田工場」で約5万7000平方メートル。ここでは国内シェアの約55%を占める年間約700台が生産され、各自治体の消防署や企業、海外などに出荷される。

 ◆オーダーメード対応

 旧「モリタ」は、消防車の製造だけでなく防災関連事業を広く手掛けていたが、効率化のため大阪府内の3カ所に点在していた工場を、舞鶴若狭自動車道の三田西インターチェンジ(IC)から車で約5分の好立地に集約。2008年4月から、現在の三田工場として稼働し始めた。同じ年の10月、モリタホールディングスを設立、持ち株会社制に移行。事業を分社化し、主力のポンプ事業を担う現在の「モリタ」が立ち上がった。

 三田工場ではポンプ車とはしご車を生産。水と消火薬剤に圧縮した空気を合わせて発泡させ、少量の水でも高い消火性能を持つ最新鋭のポンプ車や、高層ビルでの救助を想定した30メートル級はしご車、救急車としての機能を併せ持つ消救車など、そのほとんどが各自治体の消防署に納入される。

 車両は自治体からの希望を受けて、オーダーメードで作られる。消防隊員らが作業を行いやすいように、呼吸器やボンベなどの資機材を積み込む場所や、手すりの位置などに配慮。内装の見えない部分のカラーリングまで、細かな設計に基づいて生産する。外観に各自治体のロゴを配したり、各地のゆるキャラのデザインを入れたり、という注文にも応じている。

 工場での生産は、年度末の納期を目指し、秋から1、2月ごろに繁忙期を迎える。それを乗り切ることができるのは、三田工場の広さと、各社に先駆けて取り入れた製造工程「シャシレス」に秘密がある。

 従来は、自動車の骨格にあたる「シャシー」が納入されてからポンプ車やはしご車の車体部分を製造するのが一般的だった。このため、自動車メーカーの納品状況によって、生産が左右されることもあった。

 そこで、車体部分をあらかじめ製造しておき、シャシーと組み合わせる工程、シャシレスを導入した。ポンプ車の心臓部分にあたる送水ユニットのパターン化も合わせて行い、大規模生産が可能になった。実際に11年の東日本大震災では自動車メーカーの製造が一時ストップしたものの、同社では納期の大きな遅れは回避することができたという。

 ◆防災意識高める

 同工場では、消防車の製造工程を間近に見ることができる工場見学が人気だ。各自治体などから発注を受け、さまざまな車体が作られていくシャシレスの工程を実際に見られる。「消防車両は普段、気にしていなくても、いざというときこそ大切なもの」(中島正博会長)として、防災の意識を高めてもらおうと、地元の小学校を中心に、社会科見学を受け入れている。

 また、モリタグループとして小学生を対象に夢のある消防車のデザインを募集する「未来の消防車アイデアコンテスト」を実施。繁忙期の見学受け入れは同社にとって苦労もあるが、子供たちに防災の大切さを知ってもらうため、今後も積極的に行うという。(岡本祐大)

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【会社概要】モリタ

 ▽本社=兵庫県三田市テクノパーク1-5

 ▽設立=2008年10月

 ▽資本金=10億円

 ▽従業員=385人

 ▽売上高=328億2000万円(モリタホールディングス消防車両事業、15年度)

 ▽事業内容=ポンプ車やはしご車の製造、販売

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 □中島正博会長

 ■開発と技術、サービスに評価

 --リーディングカンパニーとして、どこが評価されているのか

 「開発と技術、そしてサービスの3つだと考えている。開発に力を入れているからこそ、取引先に新たな提案ができる。また、緊急時に対応できるようにアフターサービスを充実させるよう意識している」

 --開発力や技術力が生かされた場面は

 「(1995年の)阪神大震災では、神戸市長田区内の火災で、水が出なくて消防車が活躍できない場面があった。この経験が、泡で消火する消防車の開発につながり、いまでは定着し、多くの自治体で使ってもらっている」

 --三田市に工場を集約して8年が経過した

 「生産工場を1つにまとめて効率がよくなった。三田工場は高速道路が近くにあり、電車で大阪や神戸にも出やすく、利便性が高い。また、三田市は田園都市のような雰囲気があり、従業員からの評判がいい。以前工場があった大阪から引っ越して市内に家を建てた若い従業員も多い。近くに三田牛を食べられる店もあり、私も楽しみにしている」

 --昨年、社長から会長になったが仕事のスタイルに変化はあるのか

 「会長になって1年になるが、全然変わらない。フィンランドの消防車メーカーを買収したので、半年ほど前から月に1度、1週間ほど会議のためフィンランドを訪れている。アフリカや中国もマーケットとして重視している」

 --工場見学が人気だ

 「工場は稼働しているし、取引先が来ていることもあるから大変なのだが、安全や防災について知ってもらおうと工場をオープンにしている。子供たちに好評の社会科見学も、当初は三田市内の小学校だけだったが、現在は他の周辺自治体からも声をかけてもらっている」

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【プロフィル】中島正博

 なかじま・まさひろ 大阪経済大卒。1972年、森田ポンプ(現モリタホールディングス)入社。取締役海外事業部長などを経て、2006年に社長。15年から現職。66歳。大阪府出身。

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 ≪イチ押し!≫

 ■高さ13メートルでも消火できるポンプ車

 1台で消火、救助、資機材収納など、さまざまな役割が果たせる「13mブーム付多目的消防ポンプ自動車」。

 ビルの5階に相当する地上約13.7メートルの高さまで、人や資機材を載せたバスケットを届かせることができる。放水銃がついており、都市部などマンションや事務所ビルといった高所での消火活動も行える。水に消火薬剤を加え、圧縮した空気を送り込むことで、発泡させて水の表面積を広げて効率よく消火することが可能だ。

 この装置、実は「“泡で消す”ということが、開発当初はなかなか認められなかった」(中島正博会長)という。

 大型車が入れない場所でも活躍でき、「コンパクトで最大の機能が発揮できるよう考案された」として、2014年のグッドデザイン賞を受賞している。