出光興産「大家族主義」が社風の根幹 定年、労組なく“人間尊重”の精神

 

 出光興産の創業者・出光佐三氏は、百田尚樹氏のベストセラー著書「海賊とよばれた男」のモデルとして知られる。1911年に故郷近くの福岡県北部の門司(現北九州市)で前身となる石油販売店「出光商会」を創業した。新興勢力と異端視されながらも、海上で漁船に燃料油を販売するなど奇抜なアイデアや型破りな経営手腕で成長した。

 同社の社風の根幹をなすのは「大家族主義」だ。定年はなく社員自身が会社人生の潮時を決める。「人間尊重」の精神で働く人に重きを置いた社風は創業以来続く。現在も定年は形式的な規定があるだけで、社員が望めばいつまでも働ける。労働組合も出光本体には結成されていない。

 また、石油業界内でも自主独自路線で「民族系」を貫き、石油元売り大手5社のうち、大型合併を経験していない唯一の企業だ。90年代に入ると、過剰投資が原因の巨額の有利子負債で経営が悪化。経営改革の一環として2006年に株式上場に踏み切った。

 佐三氏のおいで7代目社長の昭氏らが、「外部資本が入ると創業者の理念が崩れる」と反対していた会長で佐三氏の長男、昭介氏(5代目社長)を説得し、上場にこぎ着けた経緯がある。