竹中工務店 電力デマンドの最適制御可能に
21世紀を拓く 知の創造者たち■エネルギーマネジメントシステム「I.SEM(R)」の開発
創業400年を超える歴史を持つ竹中工務店。これまで、歴史的建造物をはじめ多くの建築物を提供してきたが、社会生活や企業活動の変化によって建物やまちづくりに求められる機能も高度化・多様化する中、このたび「竹中脱炭素モデルタウン」への取り組みを開始した。VPPをはじめとしてさまざまなエネルギーマネジメントが展開されるが、その中核をなす技術の一つが、複数の建物を一括制御して電力デマンドに高精度で対応することができるエネルギーマネジメントシステム「I.SEM(R)(アイセム)」だ。そこで今回、I.SEMやI.SEMを構築・管理するクラウド基盤「ビルコミュニケーションシステム(R)(ビルコミ)」の開発担当者4人に仕事のやりがいや将来目標などについて聞いた。
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□岡野健二さん より使い勝手よく
▽おかの・けんじ 環境エンジニアリング本部 エネルギーソリューション企画グループ副部長
□茂手木直也さん 未知領域への挑戦
▽もてぎ・なおや 環境エンジニアリング本部 エネルギーソリューション企画グループ課長
□横山茂紀さん 専門超えた協議も
▽よこやま・しげのり 環境エンジニアリング本部 エネルギーソリューション企画グループ
□粕谷貴司さん 都市レベルに普及
▽かすや・たかし 情報エンジニアリング本部
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--今回のプロジェクトにおける役割は何ですか
岡野 空調・電気設備とエネルギーマネジメントシステムの融合を中心とした、プロジェクト全体のとりまとめ役です。
茂手木 I.SEMの機能要件設定や構成、制御ロジックを担当しています。電力自由化後の電力システムの中で、どういうデータに基づいて、どう制御したらどんなメリットが出せるのか、ということをシステムとして具現化しています。
横山 I.SEMにおけるハード部分(パワーコンディショナー、蓄電池など)の制御および性能評価を担当しました。
粕谷 ビルコミを使ったシステム設計を担いました。約40あるシステムを組み上げて、それをベンダーに実装してもらうための調整が主な業務です。
--どのようなところに仕事のやりがいを感じましたか
岡野 建築設備関連分野で、今回のようにビルコミとI.SEMをパッケージ化したようなシステム開発はめずらしく、経験したことのないものでした。今回の開発を通して、多くのサブシステムが繋がり、目標の性能を発揮して稼働するところに面白さを感じました。
茂手木 これまでの技術開発では、建物単体でのエネルギー消費の抑制が重視されてきましたが、近年、ICTの進歩により、建物が地域や電力網とリアルタイムに繋がって社会全体で効率化することが可能になってきました。その中で、建設業界だけでなく、さまざまな業種・ビジネスモデルとの連携が求められているのが今の状況です。5年後、10年後にどういう社会になっているか、国内外のさまざまな状況から予想しながらシステム開発を行うことが難しく、いつも悩むのですが、こうした未知領域への挑戦というのが面白いところです。
横山 今回の開発にはさまざまな専門企業に携わっていただいており、開発の上流として課題発見と情報共有のスピード感を意識しました。至らない点ばかりですが、自分の第一歩からシステムの品質が向上していくことに楽しさと誇りを感じました。社内外のバックアップにより、不具合の改善につなげられたことに充実感もあります。
粕谷 これまで取引がなかった専門企業の方にもご協力いただいてシステムを開発しました。今後、こうした連携はさらに増えてくると思いますし、それを私たちが先行して取り組んでいるという自負があります。また、最近、建設業界では高度なITを利用する事例が注目を集めてきています。私自身、電力自由化やスマートグリッドなどの新しいニーズに対して最新技術で建設とITをコーディネートすることに興味があります。
--大変だったことや苦労した点は
岡野 パッケージとはいえ、建物ごとにカスタム化する部分もありますので、のちのことを考えて手間がかからないようにどうシステムを組み立てるか苦労しました。
茂手木 一貫した制御ロジックは、どうしても一度は自分の中で熟考して作る必要があるのですが、複雑に作り込んでしまうとロジック自体の妥当性をメンバーやパートナー企業が客観的に検証できなくなってしまいます。その結果、考案した制御ロジックに致命的な欠陥があり、時間をかけて構築したプログラムがゼロに戻るというトライ&エラーをやってしまったこともありました。
横山 想定通りの運用とならない際の原因分析に注力しました。パートナー各社と専門領域を超えて協議し、運用データを共有しながら制御ロジックをチューニングしていきました。
粕谷 たくさんのシステムを、検証しながらつくりあげていくことには苦労しました。クラウドならではの課題もあって、ノウハウの習得は大変であり、多くのトライ&エラーを繰り返しながら知見を得ました。ITが建築にフィットしないところもあり、それを補完するのがクラウドだと考えています。そのクラウドを使いながら全体をコーディネートしていくということを、今回、学びながら身につけました。
--今後の目標は
岡野 今回のシステムをもっと手間をかけずに採用できるように使い勝手を向上させていきたいと思います。例えば、AI(人工知能)などでカスタム化ができるようになるなどです。また、エネルギーの使用状況をコントロールしながら年間でのエネルギーの効率化が図れるシステムを開発し、提案していきたいです。
茂手木 今回のシステムを実際の電力会社の料金体系や電力系統のサービスと連携し、経済ベースで成り立つようにしていきたいです。将来的には、電力網の電源割合の中で再生可能エネルギーが中心になっても大丈夫な建物側のエネルギー消費形態を実現したいと考えており、サステナブルで自立可能な社会をつくることが最終目標です。
横山 今回のシステムをいかに経済的に届けるか、ということに魅力を感じており、そのためにコストの合理化を進めていくことが当面の目標です。将来的には持続可能社会の実現に向けたエネルギーマネジメントを提案できるようになりたいと思っています。
粕谷 今回のシステムは複数のビルに展開できるようになっていますので、これを都市レベルに普及していきたいです。また、高度なクラウドを使ったITをもっと一般化していきたいと考えており、そういう活動に関わっていきたいです。
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【会社概要】竹中工務店
◇取締役社長COO=宮下正裕氏
◇創立=1899年(創業1610年)
◇資本金=500億円(2016年3月現在)
◇本社=大阪市中央区本町4-1-13
◇社員数=7473人(2016年1月現在)
◇主要事業=建築工事および土木工事に関する請負、設計、監理、建設工事、地域開発、都市開発、エネルギー供給および環境整備などのプロジェクトに関する調査、研究、企画などエンジニアリングとマネジメントほか
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フジサンケイビジネスアイは「独創性を拓く 先端技術大賞表彰制度」を設けております。このシリーズは2015年の運営に協力いただきました協賛企業の研究開発活動を紹介するものです。
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