駅そば“大阪夏の陣”で火花 阪急vs南海…名門私鉄が仰天メニュー
駅構内で営業する「駅そば」で“夏の陣”が勃発(ぼっぱつ)した。ポテトフライを具にした「ポテそば」が大ヒットした「阪急そば若菜」が、今度は「かき氷」とコラボレーションした「かき氷そば」を売り出した。冷たい氷でそばがさらに締まり、うまさが増すという夏にぴったりの一品だ。これに対し、「南海そば」はエビ天など10種のトッピングをこれでもかというほど山盛りにした「具が多すぎるそば」を発売した。阪急vs南海。往年のプロ野球パ・リーグのカードをも彷彿(ほうふつ)させる。新メニューをひっさげ、関西の名門私鉄のプライドを賭けた戦いの幕が切って落とされた。(橋本亮)
氷でおいしさアップ
皿の上にうずたかく盛られた氷。一見すると、ただのかき氷にしかみえない。つゆをかけると、溶けた氷の下からそばが顔を出す。
阪急阪神ホールディングス傘下の阪急阪神レストランズ(大阪市北区)が7月9日から、駅構内のそば屋「阪急そば若菜」の2店舗(十三店、西宮北口店)で販売を始めた夏季限定(8月31日までの予定)メニュー「かき氷そば」(500円)。冷たく締めたそばと甘く味付けた刻み揚げを細かく削った氷で閉じ込めた変わり種だ。「つゆをかけると、氷がほどよく溶け、そばがさらに締まり、きりりとした冷たさが最後まで味わえる」(同社営業企画部の担当者)のだという。
十三店では昨年2月、若者客を増やそうと、ポテトフライを具にした「ポテそば」(370円)を発売したところ、1カ月間に3千食以上売り上げる大ヒット商品となった。ポテそばに続けとばかりに売り出したかき氷そばだが、発売したのが梅雨明け前の時期ということもあり、「売れ行きはボチボチ。期待していたよりも鈍い」と担当者は打ち明ける。それでも、「見た目のインパクトは大きい。暑くなるこれからが勝負だ」と巻き返しに期待を寄せる。
史上最多で“愛”を
関西風の甘めのだしに牛肉やエビ天、野菜のかき揚げなど計10種類の具が器からはみ出すほど盛りつけられた「具が多すぎるそば」(500円)も、見た目のインパクトでは「かき氷そば」にも負けてはいない。
見た目そのままの「具が多すぎるそば」。南海電気鉄道傘下の南海エフディサービス(大阪市浪速区)が運営する「南海そば」が期間限定(7月16日から同31日)で、全6店(南海難波駅2階、3階、新今宮駅、三国ケ丘駅、和歌山市駅、JR天王寺駅)で販売。各店1日50食限定で、10種の具は今年で創業50周年の南海そば史上最多となった。
昨年に開業130周年を迎えた南海電鉄は「愛が、多すぎる。」をスローガンに掲げ、ブランドイメージの向上を図るプロモーションを展開。「具が多すぎるそば」はその一環として、「多すぎる愛を具の数で表現した」(南海エフディサービス担当者)。本来は千円を超える価格になるだけに、販売開始前から、「いつから食べられるのか」といった問い合わせが多く寄せられたという。
7月1日から同15日までの間、南海そばの名物「箸タワー」をくじに見立て、「愛」や「多すぎる愛」と書かれた“当たり箸”を引き当てた人に、「トッピング無料券」や「何でも1品無料券」をプレゼントするキャンペーンも行った。
関西復権の起爆剤に
新メニュー対決では火花を散らす両者だが、「駅そばファンをもっと増やしたい」(南海エフディサービス)という思いに違いはない。互いに切磋琢磨(せっさたくま)することで、駅そばの認知度が高まり、来店者が増えることが何よりも重要だからだ。
駅そば自体もここ数年で急速な“進歩”を遂げている。従来はホームなどで立ち食いするのが一般的だったが、最近は女性客や子供連れも意識し、カウンター以外に座席を備え、ゆったりと食べられる店も増加。これまでのサラリーマンや男性客に加え、家族連れや若い女性、訪日外国人客の利用も目立ってきている。
JR姫路駅(兵庫県姫路市)の名物「まねきのえきそば」を再現したカップ麺が売り出されたり、首都圏で展開する立ち食いそばチェーン「名代 富士そば」でも「ポテそば」が販売されるなど、いまや関西が駅そば人気の牽引(けんいん)役になっている。地域経済の地盤沈下が叫ばれる中、各社が工夫を凝らした駅そばが関西復権の“起爆剤”になる日が訪れるかもしれない。