アサヒビール、缶チューハイ「アサヒもぎたて」(2-2)

開発物語
「アサヒもぎたて」の開発に携わったメンバー。左から波多野稔子さん、宮广朋美さん、和田華奈子さん=茨城県守谷市

 ≪TEAM≫

 ■果物を何度も食べ、本物らしさ追求

 「アサヒもぎたて」の開発プロジェクトを中心となって進めてきた宮广朋美さんは、RTDの開発担当として「カクテルパートナー」や「カルピスサワー」など数々のヒット商品を手掛けた。こうした功績が評価され、社運をかけた大型商品の開発責任者として白羽の矢が立った。上司から「そろそろホームランを狙ってみないか」と打診された際、尻込むどころか「やっとチャンスがめぐってきた」と強心臓ぶりをみせる。

 「アサヒもぎたて」のブレークで、アサヒビールの頼れる“スラッガー”となりつつある宮广さんだが、開発中は眠れぬ夜もあったという。パッケージのデザインをめぐり、開発期間の終盤にさしかかった時期にもかかわらず異例ともいえる社内コンペが実施された。会社的には大型商品だけに失敗は許されないとの考えからだが、ゼロから開発に携わった宮广さんの心中は複雑だったはずだ。最終的には宮广さんらが手掛けたデザインが採用されたが、「ちょうどこの時期に開発担当から外される夢を見ました」と明かす。

 開発の中心になったのは宮广さんだが、強力なサポートメンバーもいた。もぎたての味の決め手といっても過言ではない果汁などの開発を担当した酒類開発研究所開発第二部の和田華奈子さんと波多野稔子さんだ。発売前に作った試作品の数は通常の3~4倍の約500にものぼったというだけに、和田さん、波多野さんら研究所のメンバーの苦労は想像に難くない。

 レモンを担当した和田さんは、宮广さんと同期入社で気心を知った頼れる存在だ。グレープフルーツとぶどうを担当した波多野さんはよりリアルな果実感を再現するため、「実際にグレープフルーツとぶどうを何度も食べ、本物の果物らしい味や香りは何かと追求した」という。息抜きもかねて、首都圏でおいしいチューハイが飲めると評判の居酒屋にも足繁く通った。

 もぎたての販売戦略などを立案する社内横断チーム「AZ」の存在も忘れてはいけない。チーム名はもぎたての開発記号からとったもので、最初から最後まで“新鮮でおいしい”という意味が込められている。マーケティング部門や営業部門、デジタルマーケティング部門など9部署から集められた約20人で構成され、全社的にもぎたてという商品の理解を深めるための役割を担う。また、サンプリングや広告といったもぎたてが売れるためのアイデアを出し合う。発売と同時のブレークも「AZ」の協力がなければ実現は難しかっただろう。手間を惜しまない商品づくりはチーム全員の飽くなき探求心が原点となっており、チームの快進撃が予想される。

 ただ、缶チューハイ市場の覇権をめぐる争いは激化しており、「手を抜くことはできない」(宮广さん)と気を引き締める。メンバー全員で知恵を絞る日々は当面、続きそうだ。

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 ≪MARKET≫

 ■高めのアルコール度数が人気

 チューハイは「焼酎ハイボール」の略称で、焼酎やウオッカなどの蒸留酒を炭酸水と果汁などで割ったアルコール飲料。缶チューハイ市場はビール類(ビール、発泡酒、第3のビール)市場が伸び悩む中、右肩上がりで伸びている。業界の推計によると、2016年の缶チューハイやカクテルなどRTDと呼ばれる国内市場規模は前年比9%増の1億6400万ケースと9年連続で伸びる見込みだ。

 購入後、栓を開ければすぐに飲める気軽さが受け、若者や女性を中心に人気が高まった。また、節約志向の高まりを背景に、ビールよりも約80円安い手頃な価格も人気の秘密となっているようだ。

 好調な缶チューハイ市場の中で人気が集まっているのが、アルコール度数が8~9%と高い商品だ。このため、ビール各社はアルコール度数が高めの缶チューハイを戦略商品と位置付けている。

 缶チューハイのナンバーワンブランド「氷結」を展開するキリンビールは「氷結ストロング」、サントリースピリッツが「-196℃ストロングゼロ」、サッポロビールが期間限定で「超男梅サワー」、アサヒビールが「アサヒもぎたて」をそれぞれ投入している。

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 ≪FROM WRITER≫

 正直にいうと、缶チューハイは苦手で、飲むことはほとんどない。でも、居酒屋の生搾りサワーはよく飲む。宮广さんらが行った消費者インタビューでの回答にあったように缶チューハイは「薬っぽい味」がするからだ。

 しかし、取材前に試しておかなければと思い、自宅の近所のスーパーで「アサヒもぎたて新鮮レモン」と「同新鮮グレープフルーツ」を購入し、飲んでみた。すると、缶チューハイに対する先入観が吹き飛んだ。

 果汁などの素材選びのこだわりは相当なものだ。売りともいえる24時間以内に搾汁した果汁もコストアップにつながったはずだが、それでも採用したアサヒビールの缶チューハイ市場にかける意気込みがうかがえる。8月末に発売する新商品「同新鮮オレンジライム」を近所のスーパーで見かけたら、ついつい手が伸びてしまいそうだ。

 そんなもぎたても居酒屋の生搾りサワーと比べると、まだまだというのが本音のところだ。缶チューハイファンが理想とする“居酒屋の生搾りサワー”を超える缶チューハイをぜひ作り上げてほしい。(松元洋平)

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 ≪KEY WORD≫

 ■アサヒもぎたて

 アサヒビールが今年4月に発売した缶チューハイ。アルコール度数は9%と高めで、炭酸も強めなのが特徴。消費者の健康志向の高まりを受け、プリン体と糖類、着色料をゼロにした。今年6月に開催された国際的な食品・飲料品のコンテスト「国際味覚審査機構」で「新鮮レモン」が「優秀味覚賞」の二ツ星、「新鮮グレープフルーツ」が一ツ星を受賞した。希望小売価格は500ミリリットル入りが191円、350ミリリットル入りが141円(いずれも税別)。