EVトラック開発競争激化 厳しい環境規制に対応、運送業向けにらむ

 
ダイムラーのブリュール工場内を走るEVトラック「キャンターE-CELL」=7月28日、独シュツットガルト市

 トラックメーカーが、電気自動車(EV)の開発を進めている。三菱ふそうトラック・バスは4月にドイツで小型EVトラックの実証試験を開始し、親会社の独ダイムラーは25トン級の大型車を公開した。米EVベンチャーのテスラモーターズも2017年にEVトラックを発表すると表明し、環境規制の厳しい都市部の運送業などへの活用に向け開発競争が始まっている。

 ドイツ南西部のシュツットガルトにあるダイムラーのブリュール工場。実習棟が立ち並ぶ敷地内を、三菱ふそうの小型EVトラック「キャンターE-CELL」で走った。試乗運転する記者の前方に従業員が実習棟から出て来たが、背後から迫るキャンターに振り返りもしない。

 「排気音がないから気付かないんだ」。同乗した技術者はこう説明した。

 試乗車は車重6トンで最大積載量は3トン。車台側部に4個のリチウムイオン電池を搭載し、約7時間の充電で100キロ以上走行する。最高出力はディーゼル車並みの150馬力を誇り、モーター駆動の加速の良さが特徴だ。

 三菱ふそうの生産拠点があるポルトガルで昨年6月まで1年間実施した実証試験で、1万キロ当たり運用費用1000ユーロ(約11万円)の削減を達成。今年4月から盆地にあるシュツットガルトに建築資材やごみ箱の運搬車として4台提供し、坂道の多い地形での走行性能などを検証している。市産業廃棄物管理局の運転手は「1日最長90キロ走るが、充電に不安を感じたことはない」と話す。

 三菱ふそうは数年内の量産を目指しており、市担当者は「排ガスを抑制するため、ディーゼル車より価格が2割程度高くても導入を検討する」と語った。

 トラック市場はこれまで、燃費が良く力強い走りができるディーゼル車が主流だった。だが、排ガスや騒音の問題があるディーゼル車に進入規制を課す都市があることに加え、運輸業の「24時間化」を背景に、排ガスを出さず、深夜でも静かに配送できるEVへの期待が高まっている。

 日産、日野、テスラ 商機うかがう

 日本では日産自動車が2015年3~5月に東京都千代田区の自転車シェア実証事業でEVトラックの試験車を提供した。小型EV「リーフ」の電池やモーターなどの技術を活用し、「振動が少ないので運転手に優しい」(日産)。

 日野自動車も小型EVトラックの開発を手掛けている。

 さらに、ダイムラーは7月、車重が26トンの大型EVトラックを世界で初めて披露した。20年の量産開始を目指し、「トラックは電動化の時代に入る」(ベルンハルト取締役)。

 新興勢力も商機をうかがっている。米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は7月に発表した経営計画で「(EVトラックは)開発の初期段階にあり、来年には発表できる」と表明、トラックメーカーの牙城に挑む構えだ。(会田聡)