出光創業家と昭シェル、亀裂は決定的 40万株取得、合併阻止に向け対抗策
出光興産と昭和シェル石油の合併計画に反対している出光の創業家側は3日記者会見し、創業者の出光佐三氏の長男、昭介名誉会長が昭シェルの株式40万株を取得したことを明らかにした。経営側が合併に先立って、英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェルから昭シェル株を33.3%取得する計画を阻止するのが狙い。創業家側は合併を撤回しない限り経営側との協議には応じない姿勢も示し、両者の間の亀裂は決定的となった。
出光は公正取引委員会の審査を待ち、9月中に昭シェル株を取得する予定で、市場外で直接、ロイヤル・ダッチ・シェルの保有株を買い取る方針。
だが、大株主の創業家は出光の「特別関係者」に当たると主張。今回、昭介氏が昭シェルの株式取得に踏み切ったことで、出光がロイヤル・ダッチ・シェルの保有株を買った場合、出光とその特別関係者を合わせた出光側の持ち株比率が33.345%となり3分の1を超える。これにより株式公開買い付け(TOB)の義務が生じる「3分の1ルール」に抵触するため、出光は計画通りに買収を進められなくなると説明した。
TOBで昭シェルの全株を取得する場合、買い付け総額は当初予定の約1700億円から約3倍の5087億円に膨らむという。
創業家側は7月22日以降、3日までの間に市場で昭シェル株を買い付けたという。昭介氏の個人資産で取得した。経営側の判断次第では追加取得を行う。出光側の持ち株比率が3分の1を上回らないようロイヤル・ダッチ・シェルからの取得株を減らすなど経営側の対抗策を阻止するため、取得状況は公表しない考えだ。
創業家の代理人を務める浜田卓二郎弁護士は会見で、昭介氏の昭シェル株取得について、「(合併計画に反対する)決意の固さを伝えるとともに、経営のあり方を考えてやむを得ずの結果だ。早期に(合併撤回を)決断してほしい」と述べ、経営側が昭シェル株取得の取りやめを公表するまで、経営側と協議しない方針を明らかにした。
昭介氏は会見に出席しなかったが「異なった経歴で働く人々の面倒を見ていくことに、非常に危惧の念を抱く」とのコメントを出し、改めて合併に反対する考えを示した。
創業家は6月28日の出光の定時株主総会で合併計画への反対を表明。7月11日に月岡隆社長と昭介氏らが協議を行ったが平行線に終わり、来年4月の合併実現は不透明になっている。
出光興産は3日、創業家による昭和シェル株式の取得について、「今後対応を検討する。昭シェルとの経営統合が最善の策と確信していることに変わりない。協議は継続する」とのコメントを発表した。
■出光興産と昭和シェル石油の合併をめぐる動き
2015年7月30日 経営統合で合意
11月12日 経営統合の方式を合併とすることで合意
16年6月28日 出光の株主総会で創業家の代理人が合併への反対表明
7月11日 出光経営側と創業家が初の正式協議。平行線で終わる
8月 3日 合併阻止へ創業家側が昭シェル株取得を発表
9月中 出光が昭シェル株33.3%を取得(予定)
年内 出光が合併の特別決議を行う臨時株主総会を開催(予定)
17年4月 出光、昭シェルが合併(予定)
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