IHI、CO2を分離・回収 世界で関心高まる「CCS」技術

 
IHIがCCSシステムの実証実験を行った豪州クイーンズランド州のカライドA火力発電所(IHI提供)

 ■石炭火力の排出を大幅削減

 地球温暖化が進む中、IHIが開発する二酸化炭素(CO2)を分離・回収して、地中などに安定貯留する「CCS」と呼ばれる技術が世界で注目を集めている。CO2の最大発生要因とされる石炭火力発電所にCCSシステムを導入できれば、排出を大幅に削減できるためで、商用化に向けて関心が高まっている。

 3つの方法

 CO2の回収方式は、大きく分けて、燃焼前回収と酸素燃焼、燃焼後回収の3つの方法がある。

 燃焼前回収方式は燃料を燃焼する前にガス化など前処理を行い、CO2と水素に転化させた上でCO2を取り除く。酸素燃焼方式は空気ではなく、酸素だけを使って燃料を燃焼させて排ガス中のCO2濃度を高めて、簡単に回収する。一方、燃焼後回収方式は燃焼後の排ガスから、吸収液などで化学反応させてCO2を回収する。

 その中で、IHIは酸素燃焼方式と燃焼後回収方式の開発を進めている。そのうち、技術的に先行しているのが酸素燃焼方式だ。通常のボイラーは空気を取り込んで燃料を燃やす。空気中の約80%は燃焼に関与しない窒素で、それがそのまま排ガス中に含まれるため、CO2濃度は10%台にしかならない。この低いCO2濃度がCO2の回収を難しくしている。80%ある窒素を事前に取り除けば、排ガス中のCO2濃度は90%以上となり、回収が容易になる。

 さらに、この方式であれば、既存のプラントでも利用できるという。また、CO2の回収過程で水も取り出せて利用できるため、乾燥地帯でも大きなメリットがある。長年、ボイラーの開発など燃焼畑を歩んできたIHIエネルギー・プラントセクターの氣駕尚志技師長は「1980年代後半から酸素燃焼の開発を進めてきたが、ラボ試験などから、CO2を経済的に回収できることがわかり、電源開発の協力や国の支援を受けられるまでになった」と明かす。

 世界初の実証事業

 そして、IHIは電源開発や三井物産などと2008年から、日本と豪州の官民共同事業として、「カライド酸素燃焼プロジェクト」を開始した。豪州のクイーンズランド州の「カライドA火力発電所」(出力3万キロワット)の設備を改造して、CCSの実証事業を行った。酸素燃焼方式の火力発電を12年6月から1万時間以上、CO2の液化回収装置と組み合わせた実証運転を12年12月から5500時間以上行った。これは実際の石炭火力発電所を使った世界初の実証事業だった。

 14年10月から12月には、液化したCO2を2000キロメートル以上離れた場所まで搬送して、地下の貯留槽の中に圧入する試験も成功させて、CCSの過程を一通り実証した。15年3月に実証運転は完了し、一定の成果をあげることができた。日本政府は世界の石炭火力発電所に酸素燃焼方式のCCSシステムの導入を目指し、調査支援を行うなど全面的にバックアップしている。

 IHIの今後のCCSの展開について、氣駕技師長は「経済性とCO2の回収や貯蔵に余分なエネルギーを使う『エネルギーペナルティー』の低減が鍵になる」と話す。その上で、「CO2を(分離・回収するだけではなく)大量に利用する『CCUS』と呼ばれる新たなシステムや、分離した窒素も有効利用するハイブリッドCCUSを目指したい」と意気込む。

 IHIが開発に力を入れるCO2の回収技術が、世界の石炭火力発電所に広がれば、地球温暖化の抑制に大きく貢献することが期待される。(黄金崎元)