AI創作物、価値生じれば権利保護へ

Bizクリニック

 □グローウィル国際法律事務所代表弁護士・中野秀俊

 政府の知的財産戦略本部は5月に「知的財産推進計画2016」を発表し、市場に提供されることでブランド価値など一定の価値が生じた人工知能(AI)創作物について、「新たに知的財産として保護が必要となる可能性がある」という趣旨の提言を出した。これはAI創作物を「生成したこと」ではなく、「世に広めて一定の価値を生じさせたこと」に権利を付与しようというもの。今後、AIが創作したコンテンツについて、どのような権利保護を与えるか議論が進むことになる。

 AIは自ら作曲をしたり、動画の編集をしたり、写真を加工するなど、クリエーティブな分野でも存在感を発揮し始めている。4月には、17世紀のオランダ画家・レンブラントの画風を機械学習や顔認識で分析し、3Dプリンターを使って“新作”を描くプロジェクトが実現し、レンブラントの作風をまねた新しい作品が完成した。

 このようにAIが自らコンテンツを創り出す時代になると、知的財産権の所在が問題になってくる。創作されたコンテンツは、(1)人による創作(2)AIを道具として利用した創作(3)AIによる創作-の3種類に分けられる。このうち、(3)のAIによる創作が、著作権法などで保護されるかが焦点になる。

 コンテンツなどの創作物は、著作権法上の「著作物」(著作権法2条1号)にあたる場合、著作権が発生し無断利用できなくなる。「著作物」の定義は「思想又は感情を創作的に表現したもの」だから、あくまで人の関与が必要で、人が創作するコンテンツのみが著作物になるという理解である。

 だから人による創作は当然、著作権で保護される。AIを道具として利用した創作も人の関与があるため、同様だ。一方、AIによる創作も人がAIに創作を指示しているため、「人の関与がある」と言えそうだ。

 しかし「著作物」は「思想又は感情を創作的に表現」する必要がある。単にAIに創作指示をするだけでは、人の思想や感情が反映されているとは言えない。したがってAIによる創作は著作権では保護されないことになる。レンブラント風の新作は、AIによる創作にあたるため、日本で同様にAI創作物が生み出された場合、著作権では保護されないことになる。

 著作権により保護されない創作物は、いわゆるPD(パブリックドメイン)として誰でも利用できる。つまり他の利用者に対して、利用料の支払いなどを請求できないことになる。

 しかし、これでは時間と労力をかけてAIの研究に尽力した人が報われず、AIによる創作を行う人がいなくなってしまう恐れがある。このため政府は、世に広めて一定の価値を生じさせれば権利保護を与える方向へ舵を切ったわけだ。

                   ◇

【プロフィル】中野秀俊

 なかの・ひでとし 早大卒。2009年から法律事務所勤務。11年にフロンティア法律事務所移籍。16年4月にグローウィル国際法律事務所を設立し現職、同時に企業経営の課題を解決するみらいチャレンジを設立し代表取締役。大学の時にIT関連で起業した経緯から、IT・ウェブ企業の法律問題に精通している。32歳。埼玉県出身。