「若者の車離れ」自動車メーカー業績失速 円高、米市場鈍化で苦戦

 
2016年4~6月期連結決算について説明するトヨタ自動車の大竹哲也常務役員=4日午後、東京都文京区

 日本の基幹産業である自動車メーカーの業績に陰りが出ている。英国の欧州連合(EU)離脱問題による円高加速や、米国での販売鈍化の可能性、国内の消費不振という「3つの不安」を抱え、系列企業の業績も悪化するなど影響が拡大してきた。株式市場でも不安定な値動きが続き、「アベノミクス再起動」を掲げた第3次安倍再改造内閣は出足から試練に直面した。

 「正直どうなるか分からないが、苦戦するのは間違いない」

 三菱自動車の販売店の担当者は、燃費不正問題の影響の長期化を懸念する。2016年の国内新車販売台数は、5年ぶりに500万台を割り込む見通しだ。軽自動車税増税の影響に加え、三菱自動車やスズキで燃費不正が発覚し、軽の販売が落ち込んだことが主因だ。

 若者の車離れという構造的な問題もある。業界団体が15年に実施した調査では、車を持たない20代以下の社会人の約6割が今後も「買いたくない」と回答した。「車がなくても生活できる」「お金は車以外に使いたい」との理由が多く、国内市場は先細りが避けられないとの見方が出ている。

 「生産体制はすぐには見直せない。急激な変動がない為替環境になってほしい」。トヨタ自動車の大竹哲也常務役員は4日、16年4~6月期連結決算の記者会見で、急速な円高に懸念を示した。

 マツダや富士重工業は世界販売台数が4~6月期で過去最高だったが、円高の影響で減益に陥った。マツダの藤本哲也常務執行役員は「コスト削減などあらゆる施策を総動員する」と身構える。

 好調な米国市場でも、景気停滞で販売台数の伸びが鈍化するとの見方が業界内でくすぶる。11月の米大統領選で保護主義的な政策を訴えるドナルド・トランプ氏が勝利すれば、輸出戦略の見直しを迫られるリスクも指摘されている。米国への輸出減少で「国内工場の生産体制が維持できなくなる事態だけは避けたい」と大手メーカー幹部は不安を隠さない。

 自動車メーカーは関連産業の裾野が広く、業績悪化の影響は大きい。トヨタ系の主要部品メーカーも7社のうち5社が減益となった。電機など他の輸出産業も円高の直撃を受けている。

 一方、円高対策を盛り込んだ政府の経済対策は、財政投融資などで事業費を膨らませたこともあり「見かけ倒し」などと市場の評価は厳しい。日銀の追加金融緩和も上場投資信託(ETF)の購入増額という小粒な内容にとどまった。

 市場では先月、経済対策への期待から円安株高が進んだが、対策の全容が明らかになるにつれてその流れは逆回転した。4日は円相場が対ドルで一時100円台まで上昇、株価は乱高下した。

 「政府、日銀が一体で政策を総動員し、デフレ脱却に取り組む」。安倍晋三首相は3日、再改造内閣発足後の記者会見でこう強調した。これに対し、民間アナリストからは、遅れている構造改革が進展しない限り「企業業績や賃金の改善は望みにくい」との声が出ている。