ソフトバンクグループ「さとふる」
ビジネスのつぼ■ふるさと納税 電子決済サイトで効率化
「簡単ふるさと納税サイト」として知名度が急上昇している「さとふる」を運営する、ソフトバンクのグループ会社「さとふる」。サービス開始当初は自治体から「ソフトバンクがなぜふるさと納税を?」と聞かれることも多かったが、インターネット上でお礼品の選択や寄付の申し込みができる「これまで世の中になかった」(高松俊和取締役)仕組みが人気を集め、全国的なふるさと納税利用者の広がりとともに、業績も急上昇している。
◆前例なく失敗連続
サイトからふるさと納税を申し込んでお礼品を受け取る一連の流れは、IT企業の雄、ソフトバンクのグループらしくシステムで自動化されている。利用者がお礼品を選んで寄付を申し込むと、該当する自治体に申し込み情報が自動的にメールで送られる。また、お礼品を提供する事業者にも、いつまでにいくつのお礼品が必要かなどが自動で伝わる。事業者はお礼品を用意するだけで、さとふるからの連絡を受けた佐川急便が集荷して配送する。事業者には利用者の個人情報は伝わらないため、負担の大きい個人情報の管理は不要だ。
しかし、2014年当初の事業化検討開始から、同年10月末のサービスが始まったころまでは、前例のないビジネスだったため、失敗や困難の連続だった。
「厳しい財政状況が続く地方自治体の収入増につながるビジネスはないだろうか」。地方競馬など地方自治体の事業支援を行うSBプレイヤーズ社員として、新規事業を検討していた高松さんは、13年末に藤井宏明社長からふるさと納税の調査を命じられ、経理業務の経験を生かして、関係法令や自治体事務、お礼品を提供する事業者の状況などを調べた。すると、11年に法令改正で、民間事業者による寄付金の徴収事務が可能になっていたことが判明。「うまく活用すれば、都会から地方に大きなお金の流れを作ることができる」と、14年4月ごろから本格的にふるさと納税の事業化に向けて動き出すことになった。
14年ごろは、ほとんどの自治体ではクレジットカード決済によるふるさと納税を受け付けておらず、紙の書類を自治体にFAXする方法が主だった。鳥取県や佐賀県ではすでに豪華なお礼品に注目が集まるようになっていたが、担当者が直接、商店街に買い物に行って、宅配便に配送を依頼するという状況で、「100件も寄付の依頼がくるとほかの仕事ができなくなる」と対応に追われていた。
そこで、高松さんら立ち上げ当初のメンバーがサービス開始に向けて必要と考えたのが、申し込みを受け付けて電子決済できるサイトの構築、お礼品の配送管理、自治体と事業者向けの営業活動、そして一連の業務についての法令との適合性確認だった。
◆100の自治体が参加
新サイトは、ネットショッピングサイトでショッピングカートに商品を入れるのと同じように気軽に、お礼品を選んでカートに入れる仕組みにした。システム構築に当たったサービス推進部の川上純部長は「まずやってみて問題が出てくれば改修しようと考えた」と立ち上げのスピードを重視したことを明かした。
参加する自治体や事業者への営業は、大規模太陽光発電所(メガソーラー)の営業で全国を回り、自治体との接点があった地域協働事業推進部の幸田宗徳部長が担当した。「『携帯屋がなんでうちのメロン買うの?』とかもよく言われた。ふるさと納税の仕組みを説明するのも大変だった」と苦笑する。
この間、社名も「ふるさとの元気、魅力をフルに」という意味から「さとふる」に決定。業務を支援する自治体からの手数料は、寄付金の額の約1割に設定した。ただ、最後まで苦労したのが、法令確認だった。税理士、弁護士に相談しながら、総務省の担当課も再三訪れて、法令上問題がないかを相談した。
そして、14年10月31日のサービス開始初日。「最初の申し込みがあってお礼品の配送が1週間ぐらいで終わり、大きな問題がなかったときは、世の中にない仕組みを成立させた実感がわいた」と、事業企画部の青木大介部長は笑顔を見せた。
ふるさと納税の寄付金額は昨年度、3年連続で増加するなど、人気は高まる一方だ。さとふるで取り扱う自治体の数も増え続けており、8月10日時点で100に達した。ただ、総務省が4月に自粛を要請したが、寄付獲得競争を背景に、高価な電子マネーや商品券などをお礼品として提供する自治体もある。しかし、さとふるでは、換金性の高いお礼品を提供する自治体は対象外としており、工業製品を提供する場合は、地元の経済にどれだけ貢献しているかを提示するよう自治体に働きかけているという。
高松さんは、将来的にふるさと納税制度が廃止された後も見据え、楽天市場やヤフーショッピングなど大手のネット通販サイトでは取り扱わないような、小規模な事業者を取り扱うネット通販サイトの開設にも意欲を示す。「地方にお金が落ち、仕事が増えることなら何でも手伝いたい」。インターネットの力で地方活性化につながるビジネスに邁進(まいしん)している。(大坪玲央)
◇
≪企業NOW≫
■テレビCMに注力 認知度向上に貢献
さとふるは、今年度からテレビCMを始めるなど本格的に広報・PR活動に取り組み始めた。2015年度のふるさと納税の実績は、約1653億円と前年度比で約4.3倍に急増したが、今後も増加が見込まれるとみて、利用者の拡大を図っている。
「大森さんもやってますよね」。俳優の大森南朋(なお)さんに、タレントの鈴木奈々さんが、ふるさと納税をしたことがあるかを問いかけると大森さんが「ん、ああ…」と生返事をしたあと、「なにそれ?!」とバッティングセンターで豪快に空振りするなどの2人のコミカルな演技が注目を集めたテレビCM。
2人は都内のJRなど、鉄道各社の列車内広告にも出演した。CMなどの2人の広告は、一部の放送局を除いて7月上旬で終了したが、さとふるの知名度向上に大きく貢献した。
CMの狙いについて、さとふる事業企画部の青木大介部長は「自治体担当者や一般の人にふるさと納税を知ってもらう手段として、広く広告を打った」と説明した。
さらに、広報担当者が6月下旬以降、北海道から沖縄までほぼ全都道府県で地元テレビの情報番組などに出演。「たくさんのお礼品をインターネットの手続きだけで完了できます」などと、さとふるの魅力や使い勝手をPRしている。
「ふるさと納税をしている人が増えてきたので、世の中にふるさと納税をすることに対する安心感が広がっている」と青木さん。制度のPRとともに、一般の利用者にも、自治体の担当者にも使いやすいサイトということを強調していく考えだ。
◇
■さとふる
【設立】2014年7月1日
【本社】東京都中央区日本橋2-2-2マルヒロ日本橋ビル9F
【資本金】3億円
【売上高】非公表
【従業員数】53人(16年8月10日現在)
【事業内容】ふるさと納税のポータルサイト「さとふる」の企画・運営や自治体業務の代行、地域活性化事業の企画・運営
関連記事