植物由来素材でCO2削減、環境配慮ペットボトル サントリーホールディングス

 
軽量化を進めてきたサントリー天然水のペットボトル

 サントリーホールディングス(HD)が環境に配慮したペットボトルの開発に力を入れている。米バイオベンチャー企業と共同で植物由来の原料を100%使ったペットボトルの開発に着手したほか、ペットボトルに使う樹脂の使用量削減や再生樹脂の活用にも積極的に取り組んでいる。目指すのは「環境配慮」と「使いやすさ」の両立だ。

 年内にプラント稼働

 サントリーHDは今年1月、米国テキサス州に植物由来の素材を使ってペットボトルの原料を製造する実証プラントの建設に着手した。年内にはプラントを稼働させる計画だ。

 2021年ごろをめどに、傘下で清涼飲料を手掛けるサントリー食品インターナショナルのミネラルウオーター主力ブランド「サントリー天然水」のペットボトルを中心に導入する。石油由来の原料を使った場合に比べて、ペットボトル1本当たり製造から廃棄までに排出する二酸化炭素(CO2)量を約5割削減できるという。

 サントリーHDは12年に米バイオベンチャーのアネロテックと植物由来のペットボトルの共同開発を開始した。

 ペットボトルは、汎用(はんよう)プラスチックのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂でできている。PET樹脂はこれまで石油由来の原料で作られていたが、これを植物由来の原料に置き換えるという試みだ。しかも原料にはサトウキビなど食用の素材ではなく、木材(ウッドチップ)を原料に使う。

 アネロテックはウッドチップに含まれる成分からPET樹脂の原料を取り出す技術を持っている。今後はウッドチップと触媒の組み合わせなどを工夫し、生産量の拡大やコスト低減といった課題を克服し、商業生産につなげたい考えだ。

 そもそもペットボトルに使う合成樹脂を減量できれば、石油の使用量も減る。サントリーグループは、ペットボトルの成形技術などに磨きをかけ、これまで減量化に取り組んできた。

 その結果、13年には「サントリー天然水」の2リットルで当時国産最軽量となる29.8グラムのペットボトルを導入した。20年前に比べると6割以上も軽くすることに成功。同じく550ミリリットルには11.3グラムのボトルを採用。こちらも20年前に比べ約65%軽量化できた。

 キャップやラベルも

 環境に配慮しているのはペットボトル本体だけではない。サントリーはキャップにも植物由来の原料を採用している。

 キャップはポリエチレンと呼ばれる石油由来の汎用プラスチックでできている。このキャップに世界で初めて植物由来原料を30%使用することに成功。現行のキャップに比べてCO2排出量を21%削減できるという。

 今春から九州熊本工場の「サントリー阿蘇の天然水」(550ミリリットル)に導入を開始。順次、「サントリー天然水」ブランドに展開していく計画だ。

 また、「サントリー天然水」はラベルにも環境配慮の工夫を凝らしている。12年にはラベルの厚さを16マイクロメートルから12マイクロメートルへ、当時として国内最薄にした。さらに再生PET樹脂を80%使用するなど環境に配慮している。

 回収したボトルをペットボトルとして再生する「ボトルtoボトル」も実用化。11年5月に「サントリー ウーロン茶」の2リットルに採用した。

 環境に配慮した飲料ボトルは、製造コストが高くなる場合が多い。それでもサントリーHDは、消費者の環境意識が高まるなか、環境技術で製品の差別化につなげる考えだ。(大柳聡庸)