新幹線誘致へ意気込む地元 北陸などに続き「基本計画線」実現期待

 
朝日を浴びながら東京へ向け新函館北斗駅を出発した北海道新幹線=26日午前、北海道北斗市(三尾郁恵撮影)

 国が「基本計画線」と定めているものの実現していない新幹線の整備を求める動きが、関係地で盛り上がっている。北陸や北海道が新規開業効果でにぎわっていることや、安倍政権が高速鉄道の整備を成長戦略の目玉としたことを受け、自治体や経済団体は要望活動やシンポジウムなどで機運を高めようと必死だ。しかし人口減や財政事情を考えれば道は険しい。

 鳥取市「チャンス」

 「日本海側は不便で、太平洋側となぜこんなに違うのか。きちっとした交通インフラで、雇用と所得を確保しなければならない」。7月末に鳥取市内で開かれた山陰新幹線の実現を目指す集会で、鳥取県選出の石破茂地方創生担当相(当時)が訴えると、集まった地元経済界の関係者ら出席者から割れんばかりの拍手が起こった。

 全国には、建設が進む北海道、北陸、九州の整備新幹線3路線のほかに、事業化されていない基本計画線と呼ばれる11路線がある。起点と終点、主要な経由地が決まっているが、整備新幹線と異なり、いわば「構想」にとどまる。大阪市から鳥取市、松江市を経由して山口県下関市までを結ぶ山陰新幹線はその一つだ。

 政府は新たな経済対策で、整備新幹線の事業費の一部に財政投融資を活用した建設加速を打ち出した。直接、基本計画線に影響するものではないが、鳥取市の担当者は「これをチャンスに、棚上げになっていた議論を進め、実現への道筋が付けば」と意気込む。

 四国4県は、4年ほど前から新幹線実現に向けた誘致活動に本腰を入れ、ロゴマークをつくったり、市民を交えたシンポジウムを開催したりしている。6月には、国土交通省や自民党に、調査費などを2017年度予算に盛り込むよう求める要望書を提出した。

 香川県の担当者は「四国の人口は北陸や北海道と比べても遜色ない」として、収益が十分に見込めると強調する。こうした動きは、奥羽、羽越新幹線や東九州新幹線などの地元でも活発になる可能性がある。

 採算見通せず

 国が全国新幹線鉄道整備法に基づき基本計画線を定めたのは、高度経済成長のピークだった1970年代初頭。その後、航空路線や高速道路など鉄道以外の交通の整備が進み、将来的に人口の急増や経済の大幅な成長が見込めない中、基本計画線をつくっても採算が取れるかは見通せない。新幹線開業後にJRから第三セクターなどに経営分離される並行在来線を「地域の足」としてどのように維持していくかといった問題もある。

 石井啓一国交相は3日の記者会見で「当面は建設中の整備新幹線に全力を挙げる」として、17年度予算の概算要求に基本計画線の関連費を計上することを否定した。国交省幹部も「次の新幹線を整備する必要性や、必要だとしたらどこから手を付けるのかについて、議論する時がいずれ来るかもしれない。しかし、あくまで長期的課題だ」と話す。