日本企業狙う「空売り」ファンド 伊藤忠など標的、対応に苦慮

 

 企業の実態と株価が懸け離れていると指摘し、株価が下がるともうけが得られる「空売り」で利益を狙う投資ファンドが日本企業に照準を合わせている。あらかじめ空売りして株価下落につながるリポートを公表する手法には批判が強いが、ファンド側は「市場の透明性が高まる」などと主張し、標的となった企業は対応に苦慮している。

 7月27日に米空売りファンドのグラウカス・リサーチ・グループが伊藤忠商事に不正会計の可能性があるとリポートで指摘。8月15日には米シトロン・リサーチがロボットベンチャーのサイバーダインの企業価値が過大評価されているとしたリポートを公表し、いずれも株価が一時急落した。

 両社は「分析が浅く事実誤認を含む」(サイバーダイン)、「(業績に)一点の曇りもない。法的対応も一つの選択肢」(伊藤忠)と強く反論。日本取引所グループ(JPX)の清田瞭最高経営責任者(CEO)が「倫理的に疑問を感じる」とファンド側の手法を批判するなど、市場に波紋が広がった。

 伊藤忠の株価は今月9日時点でリポート公表前の水準を回復し、ファンド側の狙い通りになっていない面もある。

 空売りファンドの日本進出の背景には、東芝で歴代トップが関与した利益水増しが発覚し、会計問題への投資家の関心が高まったことなどがあるとみられる。専門家の間には、株価が本来の企業価値を反映していないと主張する点で「株式を買い進めた上で価値向上策を迫る『もの言う株主』と発想は同じ」(金融商品取引法に詳しい弁護士)との見方がある。

 違法性の有無を判断する上では、相場を変動させる目的で合理的な根拠のない情報を広める金商法上の「風説の流布」に当たる表現がリポートに含まれるかどうかも焦点になりそうだ。