右肩上がりのワイン市場 サントリーは肉専用の「黒」、ハウスは“宅飲み”
ビールや日本酒などが国内市場で苦戦するのを尻目に、ワインは右肩上がりの成長を続けている。「肉料理専用」のワインなどの新商品が人気を集めるほか、国産ワインの需要の高まりを受け、近畿のワイン醸造者らが関西ワイナリー協会を立ち上げ、市場を盛り上げる。家庭でワインを楽しむ人向けにワインに合う料理が簡単に作れるスパイスも販売され、ワインファンの裾野は一段と広がりを見せている。(藤原直樹)
肉専用の「黒」
大阪市北区の熟成肉レストラン「ザ・エイジングハウス1795堂島店」。約1カ月間熟成させた牛肉を強火で焼き上げるステーキが売りの同店で人気を集めるのが、サントリーワインインターナショナルが輸入する「肉専用」の米国産ワイン「カーニヴォ」だ。
重厚感のある味わいが肉料理との相性が良く、濃厚な色合いから「黒ワイン」と称している。店長の西田英志さんは「実際は赤ワインの一種だが、『黒』は珍しいこともあり、お客さまの反応は良好だ」と話す。
カーニヴォは「ステーキブーム」を受けて平成26年に商品化された。店頭想定価格はフルボトル(750ミリリットル)で2400円程度だが、飲食店では4千円前後で提供されることが多い。
サントリーはカーニヴォの成功に伴い、「豚肉に合うワイン」や「グリル専用ワイン」などの新商品を相次いで市場に投入し、“二匹目のドジョウ”を狙う。
関西では協会設立
拡大が続く国内ワイン市場は27年に15年の約1・6倍の規模に達したが、その成長を支えているのは低価格なチリ産ワインだ。財務省の貿易統計によると、27年のチリ産ワインの輸入量は長年トップだったフランス産を初めて上回った。
また、24年ごろからは気軽にワインが飲める飲食店「バル」が増加。サントリー酒類の榎原俊樹部長代理は「低価格ワインとバルのおかげで日常的に飲む人が増えてきた」と指摘する。
ワイン人気を追い風に国産の需要も高まっている。輸入ワインも日本で瓶詰めされると、「国産」になるため、国産ブドウで作ったワインを「日本ワイン」と呼び、差別化を図る動きが出ている。今年6月には近畿のワイン醸造業者13社が知名度向上を目指して関西ワイナリー協会を設立し、販売拡大に乗り出した。
簡単におつまみ
低価格ワインの普及により、家庭でも気軽にワインを飲む人が増えている。
ハウス食品はワインの“宅飲み”需要を取り込もうと26年8月から、ワインに合う「おつまみ」を家庭で簡単に調理することができるスパイス「スパイスクッキング バルメニュー」シリーズを販売している。
「アンチョビキャベツ」「アヒージョ」など10種類で販売を開始し、現在は17種類を展開。想定価格はいずれも4人分で120円程度と、低価格ワインに合わせ、買い求めやすい値段に設定しているのが特徴だ。
今年4~6月の販売は前年同期を40%以上上回っているといい、ハウス食品の担当者は「ワイン関連の商品は成長分野。販売拡大に向け、商品群を拡充させてたい」と意気込んでいる。
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