石橋博史システム科学社長の処方箋
ホワイトカラー革命■業務の可視化が元気の源
◆残業が発生する要因
ホワイトカラーの業務は、日常業務管理と情報管理が徹底されていないこと、多能化OJT(職場内訓練)による人材育成が進んでいないことについて、前回指摘した。こうした課題を改善していく方策を見いだせないまま、先延ばししてきたからか、最近メディアが取り上げているのが「残業」の問題。過重労働や違法労働を行う企業を「ブラック企業」と呼んで対処を促している。経営トップの鶴の一声で一時的には抑制されても、何らかの恒久策を取らない限り元に戻ってしまうのが常で、直ちに解決するわけにはいかない。今回は、これらの問題に対する画期的な解決法を紹介する。
残業が発生する要因を挙げると、次のようになる。
第1は働き方の習慣。バブル景気にわいた1990年以前は1日は24時間あるぞ、と働け働けの雰囲気がはびこっていた。現在でも経営者層の心の片隅に残っている。
第2はグローバル化に伴う24時間の対応。特にメーカーでは、海外の生産現場が現地主体の体制に変わってきているものの、主に管理系で時差による仕事の時間帯の差から残業を余儀なくされている。
第3は季節的要因。受発注の時期的な偏り、締め切り日の集中、リスクの発生対応などによる業務量の偏りに対処できず、安易な残業が行われている。
第4は人材育成の問題。現在は、幅広く実務の訓練が行われている企業は少なく、個人のスキルは「単能職」で他部署の作業ができない。従って、忙しい職場に余裕のある職場から当たり前に応援ができる、多能職化されたスキルを持った人材は少ない。また、このようなことができる社内制度もない。
第5は例外的に突然発生する仕事や製品の不具合、上位者による特命などである。
◆同じ目線で情報共有
これらの要因を解決する業務改善の基盤づくりとして推進すべきことは次の3つである。
(1)業務を目で見てわかる状態にすること(可視化)。
(2)全員が参加して改善する環境づくりをすること。
(3)各自の仕事の価値測定ができること。
この3項目を推進するためには、企業の組織を構成する「組織三者」(経営者・管理者・担当者)が同じ目線で情報を共有化して、スピーディーに活動する必要がある。さらにその活動を支援する手段(方法)とツールが「業務プロセスの可視化法とチャート作成システム」だ。2010年に特許を取得。成果を上げる企業が誕生するなど、改善活動につながっている。
業務プロセス改善は、ソフトウエア化されたツールで短期間に各自の業務をチャート化することによって、業務(業務機能)を体系化することや、業務機能管理の基となる原単位(単位業務と単位作業)を決めることが基本となる。この原単位を基に業務管理点マニュアルができる。
マニュアルの導入によって、口頭や文書、電子化データなどの業務情報がリアルタイムにわかる状態(可視化)になる。さらに可視化された情報は業務の把握、分析、改善を楽に進めることに役立つ。現場の改善に対する納得感を高めるとともに、抵抗感を払拭(ふっしょく)する力になり、成果が上がりやすくなる。
次回は改善力を取り上げる。
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【プロフィル】石橋博史
いしばし・ひろし 1962年、矢崎総業に入社。86年システム科学を設立し、現職。トヨタ生産方式や生産工学をもとにした業務革新の実践・支援ツール「HIT法」の開発、導入、コンサルティングを手掛ける。2010年2月、「業務プロセスの可視化法とチャート作成システム」で特許を取得。77歳。東京都出身。
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