アデコグループ「Adecco WAY TO WORK」
ビジネスのつぼ■仕事経験通じ、若者にキャリア形成意識を
2008年のリーマン・ショック以降、海外では若者の就職難が大きな課題だ。スイスに本社のある大手人材サービスのアデコグループは、若者が仕事経験を得ることで、自立的なキャリア形成意識を持ち、社会人としてはばたくための支援プロジェクト「Adecco WAY TO WORK」を行っている。
◆参加の従業員にも誇り
「苦難を乗り越えるためにはパッション(情熱)が必要だ」「人を信じること、くじけない力が企業家として行動するときに必要だと思う」
今月9日、東京都内のアデコ日本法人で開かれたプログラム「CEO FOR ONE MONTH」の最終選考会。壇上では、計5万4600人の応募者から選出された5人が、リーダーになるための思いをそれぞれ訴え、フランス代表のカミル・クレメントさんが栄誉に輝いた。クレメントさんは、アデコグループのアラン・ドゥアズ最高経営責任者(CEO)から1カ月間、直接指導を受けながら業務体験をする機会を手にした。
このプログラムは13年から始まったAdecco WAY TO WORKの一環として行われた。ドゥアズ氏は傍聴席の最前列に座り、柔和な表情で若者たちの主張に何度もうなずいていた。
なぜ、アデコグループは若者を支援するのか。ドゥアズ氏は「世界中で7100万人もの若者が失業している。職場のソリューションを提供する立場のわれわれとしては、仕事を経験する機会を若者に与えたかった」と、理由を語る。若者支援を継続することで優秀な人材が蓄積され、自社での採用および、顧客企業への紹介につながると期待している。
Adecco WAY TO WORKのプログラムには、若年層を対象にキャリア構築を成功に導くためのアドバイスを行うイベント「STREET DAY」や、インターンシップ形式による就業体験「Internship Opportunities」も展開している。
プロジェクトの年間予算はグループ全体で180万ユーロ(約2億円)。ドゥアズ氏は「180万ユーロで100万人の若者を助けたと考えれば、1人当たり1.8ユーロ。大変良い投資といえる」と話す。
成果をもたらしたのは、若者だけではない。アデコグループの従業員には行事への参加を通じて「社会貢献」という意識が芽生え、誇りを持つことができた。アデコグループのビジョン「better work,better life」の実現にもつながる。
◆スキル磨く体制構築
日本でも、新入社員の3割が3年以内に退職しているなど、若者の就職面での課題がある。日本の若者への教育制度について、ドゥアズ氏は「教育の質はすばらしい」と称賛する。
だが、アデコグループが実施した世界の若者の就職に対する意識調査によると、「在学中に自身が就きたいと考える職業で必要とされるスキルを身につけている」と考えている人は、ドイツの若者(89.11%)に対し、日本の若者は31.54%で13カ国中最も低かった。日本の高等教育の課題を浮き彫りにしたといえそうだ。
アデコグループは「スイスやドイツをはじめ、職業訓練のシステムを確立している国ほど、若者の失業問題への取り組みがうまくいっている」と分析する。ドゥアズ氏は「若者の雇用は社会全体で取り組むべき課題。政府と民間がよく協力して新たな教育システムのデザインを進めることが欠かせない」と指摘する。
そのためには、労働市場が求めるスキルを磨くことができるような体制を構築することが必要だ。アデコグループは15年以降、Adecco WAY TO WORKの一環として世界各地で5000人超の若者にインターンシップや職業実習の機会を、約80人に対してCEO FOR ONE MONTHの機会をそれぞれ提供した。
ドゥアズ氏は「現状のプロジェクトをさらに改善したい。将来は、CEO FOR ONE MONTHへの応募者を25万人規模まで増やしたい」と意気込む。アデコグループの若者就業支援活動はさらなる高みを目指している。(鈴木正行)
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≪企業NOW≫
■ビジネス最前線で学ぶ大切さ伝える
アデコグループが実施するプロジェクト「Adecco WAY TO WORK」は、若者にビジネスの最前線で学ぶことの大切さを伝えている。若者に最高経営責任者(CEO)の仕事を体験させ、自身で考え、決断する場を提供していることに意義がある。
2015年の「CEO FOR ONE MONTH」では、日本代表の久乗亜由美さん(当時22歳)が受賞し、アラン・ドゥアズCEOから直接指導を受けた。海外メディアの取材対応やビジネスプランの立案、タイの大学での講演、ベルギーでは1000人の聴衆を前にスピーチをした。
今年は、国内約1800人の応募者の中から「予選」を勝ち抜き、大学3年、弘田百合子さん(20)が日本代表に選ばれた。弘田さんは「就職活動に不安を抱いていた。プロジェクトを通じて、会社が社会をどのように変えているのかを知りたかった」と応募の動機を語る。
弘田さんは、アデコ日本法人の川崎健一郎社長と一緒に業務を1カ月体験し、「人材ビジネスにおけるイノベーションプランを作る」という課題を与えられた。第一戦で活躍している社会人と面会するなど、ゼロから情報収集を行った。そして、ビジネスの現場でソーシャルメディアや仮想現実(VR)が活用される中、人材ビジネスが未来に通用する会社になるためにどうしたらよいかをまとめた。弘田さんは「自分の将来について選択肢が見えてきた」と振り返った。
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■アデコグループ
【設立】1957年
【本社】スイス
【売上高】220億1000万ユーロ(2015年度、約2兆5000億円)
【従業員数】3万2000人
【上場証券取引所】スイス証券取引所
【拠点数】60を超える国・地域に5100カ所以上
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