積水ハウス 女性活躍進め「なでしこ銘柄」3度選定

 

 □伊藤みどりダイバーシティ推進室長

 経済産業省と東京証券取引所は、女性活躍推進活動に優れた企業を「なでしこ銘柄」として選定している。他業界に比べ女性の活躍が遅れている住宅・建設業界の中で、これまでに唯一、3回にわたって選ばれたのが積水ハウス。研修活動の「ウィメンズカレッジ」など、女性管理職登用に向けた研修や指導に力を入れているのが理由で、その推進役を担うのが経営企画部の伊藤みどり・ダイバーシティ推進室長だ。

 「寿退社」しない空気

 伊藤さんが入社して配属されたのは神戸営業所(現支店)。半年後、住宅展示場のモデルハウスに配属され営業のサポートを行うようになった。やがて結婚、出産を経験する。

 今でこそ育児・介護休業法が定められており、同社でも最大で産後3年は休業できるという制度を導入しているが、1970~80年代は「寿退社」が当たり前の時代。休業法も存在せず、伊藤さんも第1子が誕生した際には産前6週間・産後6週間の休暇を取得しただけで現場復帰した。

 仕事を続けた理由は「辞める理由がなかったから」。社員の持ち家取得を促進する企業に向けた営業を任されるなど、さまざまな仕事を与えられ、充実した日々を送っていたからだ。

 「女性が活躍できる職場づくり」という未踏の地を開拓していく伊藤さんの行動に社内の女性は勇気づけられ「結婚しても辞めない」といった空気が徐々に醸成されていく。家庭と仕事をきちんと両立させるケースが相次いだことから、男性社員からの理解も進む。社内結婚の場合には上司が夫に対し「辞めさせたらあかんぞ」と忠告するようになったほどだ。

 社内制度の充実化へ

 91年にはキャリアを積み重ねる上で大きな転機を迎えた。神戸支店の女性から「営業をやってみたい」との相談を持ちかけられ、上司に掛け合ったところ「伊藤さんが面倒を見るなら」ということで、事務スタッフを含め5人全員が女性という支店のトップとなったのだ。

 その場所は神戸市内にある約3000世帯で構成された大型分譲地。基礎工事から完成するまでをオープンにし、その建物自体を営業拠点にして売りに出すという手法を取り入れ実績を残していった。2005年には累計で300棟の引き渡しが認められて、社長表彰を受けた。

 05年は積水ハウスにとっても、大きな転換期となる年だった。経済と環境、社会に「住まい手」を加え4つの価値によるバランスの取れた経営を目指す「サステナブル宣言」を発表したからだ。翌年には女性活躍推進グループを設置。社内公募で立候補し、伊藤さんはグループリーダーに就いた。

 その頃は女性の採用にも力を入れ始めた時期だったが課題があった。住宅営業は“夜討ち朝駆け”が不可欠で、女性の負担が大きいからだ。このため07年から全国の女性営業が集まる交流会を開催。業績表彰や優秀社員による成功事例の発表、グループ討議などを行うことでモチベーションのアップを図っており、女性店長も着実に増えている。ワークライフバランスの強化に向け、仕事と育児の両立をサポートする各種制度の充実も進めている。

 顧客の半数は女性で、住宅には高齢者や体の不自由な人ら多様な人が暮らす。これを踏まえ多様な人材を積極的に活用する「ダイバーシティ」を推進する意義について、伊藤さんは「顧客のニーズをしっかりと受け止めるには、会社として多様性を追求する必要がある。その入り口が女性活躍だ」と話す。

 06年に15人だった課長以上の女性管理職の数は、ウィメンズカレッジの効果によって着実に増加。グループ全体で100人を超えるようになった。20年までに5%に当たる200人へと拡大することを、当面の目標として掲げている。

【プロフィル】伊藤みどり

 いとう・みどり 1974年、積水ハウス入社。84年営業職に転じ、91年、女性初の店長に。2006年、女性活躍推進グループリーダー、14年2月から現職。61歳。神戸市出身。

【会社概要】積水ハウス

 ▽本社=大阪市北区大淀中1-1-88 梅田スカイビル タワーイースト

 ▽設立=1960年8月

 ▽資本金=2025億9120万円

 ▽従業員=1万5917人

 ▽事業内容=建築工事の請け負い、施工