Bリーグが新たなうねりを生む

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Bリーグ開幕前セレモニーでは、華々しい演出で、A東京と琉球の選手たちが登場した=22日、東京・国立代々木競技場

 新たなうねりが生まれる。バスケットボール男子のプロリーグ「Bリーグ」が先週末、開幕した。「BREAK THE BORDER(境界を壊せ)」と掲げられたスローガンに、思いが集約されている。

 ちょうどリオデジャネイロのパラリンピック観戦から帰国した22日が開幕当日。成田からアルバルク東京(A東京)対琉球ゴールデンキングス戦が行われる東京・国立代々木競技場に直行した。小雨で煙る悪天候だが、人混みをかき分けなければ座席に届かない。主催者発表9132人。集客は狙い通りか。

 床に50センチ四方のLEDパネル1680枚を敷き詰め、ポリカーボネート材で覆う。このスクリーンにCGによるコートが投影され、プレーごとに「EXCELLENT」や「GOOD DEFENSE」など文字が浮かぶ。赤や青の点灯が雰囲気を盛り上げ、天井からつり下げられたスクリーンがプレーを大映しし、表示パネルが刻々変わる展開を表示する。関係者が口にする「異空間の演出によるエンターテインメント環境の創出」。競技会場であると同時に、芝居や音楽を味わうように選手のパフォーマンスを堪能できる「アリーナ」が、そこにあった。

 ◆アリーナにこだわり

 なぜ、Bリーグ創設に傾注した前日本バスケットボール協会(JBA)会長の川淵三郎エグゼクティブアドバイザーは「アリーナ」にこだわったのか。

 川淵さんは国際バスケットボール連盟の付託をうけ、企業クラブ中心のナショナルリーグ(NBL)とプロ化したものの規模の小さいbjリーグに分裂していた日本のバスケットボール界統合に着手。わずか半年でBリーグを立ち上げた。その際、「収容人員5000人以上、ホームゲームの8割を開催できるホームアリーナを有する」ことを参加条件とした。

 アリーナとはスポーツに限らず、エンターテインメント施設として人々が集う場である。手本とする米バスケットボールリーグ(NBA)の試合会場は、行くといつもわくわくする。最高のパフォーマンスを味わう場がそこに確立していた。

 しかし、日本ではバスケットボールにしろ、バレーボールやハンドボール、卓球などにしろ会場は体育館。スポーツは行われていても試合を「みて、感じて、楽しむ」空間はない。川淵さんはそこを変えたいのだ。スポーツとエンターテインメントとの境界を壊したいのだ。

 もちろん、すぐにできるはずもない。まずはBリーグ開催を通してスポーツを楽しむ空間創造を行う。北海道から沖縄までB1からB3、45クラブが参画したBリーグから地域コミュニティーの拠点を作り、うねりを起こしていく。すでに、沖縄では1万人収容の新アリーナ建設計画が進行している。

 いってしまえば新たな「アリーナ・ビジネス」の波を起こす狙いだ。その未来形が22日の“代々木”にあった。

 ◆世界の競技人口1位

 笹川スポーツ財団などの調査では、国内での競技者登録人口はバスケットボールは約63万人でサッカーの約96万人には及ばないものの、第2位を占める。世界の競技者人口ではサッカーの約2.6億人に対し、約4.5億人と第1位の人気を誇る。

 ところが、Bリーグの資料によると、国内の市場規模は約100億円で、サッカーの約1000億円の10分の1、野球の1600億円には遠く及ばない。入場者数も約140万人で、サッカー900万人、野球の2200万人ははるかかなたなのである。

 長く、不毛な対立が引き起こした結果だが、潜在的な能力をいかに引き出すか。それがBリーグ隆盛に大きく関わる。

 開幕戦のA東京は旧トヨタ自動車東京を母体に昨シーズンのNBL勝率1位、琉球もbjリーグを4度制した強豪。両リーグを代表するクラブ同士の激突が新時代を象徴した。B1・18クラブはNBL8、bj10。勢力が拮抗(きっこう)するなか、境界を壊さなければ長続きはしない。

 ただ、フリースローの度重なる失敗など、レベルは途上段階。技量向上も急務だ。このままではNBA視聴で目の肥えたファン層の拡大にはつながるまい。開幕第1節は余韻もあって全国9会場18試合に7万4827人の観客を集めたが…。

 いずれにせよ、1993年5月15日発足のJリーグ以来となる「第3のプロリーグ」は、あらゆる角度から注目、分析していく価値がある。(産経新聞特別記者 佐野慎輔)