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“遊技”の進化に挑む 藤商事の50年

 ■「100年企業」キーワードに未来切り開く

 □代表取締役社長 井上孝司氏

 日本を代表する大衆レジャーであるパチンコ・パチスロにおいて、藤商事は遊技機メーカーとして、創立以来50年の歴史を刻んできました。その間、社会情勢や価値観の変化を理由に、遊技業界は幾度となく苦境に立たされ、しかしながら何度もこれを乗り越えて参りました。

 ◆価値観の変化に対応

 日本生産性本部が発行するレジャー白書によると、1995年に売上高30兆円であった市場規模が、2015年には約23兆円にまで縮小。推計参加人口は1000万人を維持しているものの、現場を見る限り、若年層を中心としたパチンコ・パチスロ離れは深刻化しつつあると言わざるを得ません。ただし、これは何も遊技業界に限ったことではなく、少子高齢化の加速やレジャーの多様化、さらには若年層世代におけるライフスタイルの変化に起因しています。自動車業界でさえ、若者のクルマ離れを問題視しつつも、なかなか止めることができないのが現状です。これまでの産業規模を維持するためには、時代の流れ、人々の価値観の変化を真摯(しんし)に受け止め、そういう人々も参加したくなる魅力を持ったレジャーへとシフトする必要があります。

 じゃん球からアレンジボール、パチンコ、パチスロまで、移り変わる時代、変化する業界にあって、藤商事はオリジナリティーあふれる遊技機を創造するメーカーとして次々と新たなステージを切り開いて参りました。このスタンスを支えているのが、「人のやらないことをやれ」「信念を持ってあきらめない」という創業時から継承されるDNAです。

 つまり、他社に先駆けて新しい何かに挑戦し、やると決めた以上は実現まで徹底してやり遂げることです。目の前の課題に対して社員1人ひとりが主体性を持って取り組み、これからも変化し続ける社会にあって、従来の理論や実践を積極的に転換しなければなりません。変化を恐れず変わり続ける勇気。その勇気を持てる者だけが、新たな時代を切り開いていけるのだと思います。

 藤商事は厳しい業況が続くこの20年間においても、業績を伸ばしてきた実績があります。ピンチをチャンスに変えるべく、遊技機の新ジャンル開拓や新たな魅力の発掘など“ものづくり”への弛(たゆ)まぬ努力、企業の屋台骨を任せることができる“人づくり”、順法かつ効率的な企業運営を実現する“組織づくり”。周囲の状況にまどわされることなく、われわれは、常に先を見据え、戦略的に将来ビジョンを描き続けています。

 ◆新たな発想をカタチに

 今年、創立50周年という時期において、4月1日に私が代表取締役社長に就任いたしました。その新体制のもと、デジタルコンテンツ事業に新規参入し、遊技機とのシナジー効果を視野に入れた展開を行っています。第1弾として、2月よりスマートフォン向けマルチプレイ対応リアルタイムRPG『マギアコネクト』の事前登録を開始したところ、初日に1万人の登録者を突破する反響を得て、3月に配信を開始しました。

 新たな発想やアイデアをカタチにするためには、私たち自身が変わり続けることが必須です。藤商事は“変化への挑戦”に真正面から取り組み、事業の核となる遊技機事業をさらに成長させるとともに、人々に必要とされる100年企業へと進化し続けて参ります。

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【プロフィル】井上孝司

 いのうえ・たかし 1950年2月17日生まれ。70年4月東芝コンポーネンツ入社。72年7月藤商事入社。77年4月名古屋工場長、93年12月取締役名古屋工場長、2004年6月常務取締役開発製造本部長、05年6月常務取締役、06年3月専務取締役、07年6月専務取締役経営企画室・企画部担当、09年6月専務取締役品質保証部担当、10年6月専務取締役管理本部担当、12年4月代表取締役専務管理本部担当、16年4月代表取締役社長(現任)。15年6月、ゲームカード・ジョイコホールディングス取締役(現任)。