石橋博史システム科学社長の処方箋
ホワイトカラー革命■「改善力」を評価項目の対象に
ホワイトカラーの改善は、遅々として進んでいない。日本企業の改善は、モノづくりの職場だけでなく、全職場に共通する課題である。モノづくりを効率良く進める管理点(活動価値の評価)は、品質、コスト、納期と認識され、モノの「良しあし」、コストの「低い、高い」、納期の「短い、長い」を尺度に数値目標を掲げ、より良く、より安く、より速くを目指し、一層高める改善着眼をし、提案を競い合う。経済のグローバル化で自社商品を追い越す企業が次々と現れ、より改善に拍車がかかっている。一方、ホワイトカラーの基本的業務は「情報づくり工場」であり、効率化を持続的に追求していく必要がある。
◆情報づくりは人対象
情報づくりの管理点は、情報の出力と入力の品質、コスト、タイミング(情報の発生時点処理=モノづくりでは納期)。人の意識や行動のモラルを基に業務を効率良く進める「スキル」、入出力情報の価値を図る「時間」(コストスピード)、処理の「タイミング」である。
生産性を考える場合、欠かせない対象物がある。モノづくりでは機械や設備、ラインが対象で、その性能や速さを運用の目標管理で決めるのに対して、情報づくりでは人が対象となる。しかし情報が人につく属人化の解消は難しく、生産性改善の足を引っ張るケースが見られる。
その一つに管理職(課長)のプレーイングマネジャーの問題がある。ホワイトカラーの効率化を妨げる最大の原因と言っても過言ではない。
多くの仕事を抱え、1人で頑張る姿は管理者としていかがなものか。リーダーシップを発揮すべき人の不在に等しく、早く、ルーチン業務を部下に移して本来の管理職の役割を果たすべきだ。これを解決しない限り生産性改善は望めない。
モノづくりでは「カイゼン」が世界の共通語になり、飽くなき努力が続けられているが、情報づくりの改善活動は一過性で、生産性を押し上げる力を持っていない。
この状況を打破するには基本的な仕掛けが必要で、次の対策が活動の基になる。
第1はホワイトカラーの改善提案の充実。1カ月当たりの提案目標数を定め、個人評価項目の対象にして、提案を仕事の一つとして、役割を明確にする。
第2は改善活動の結果を課長の評価項目に加える。組織の競争力向上のために、課長がリーダーシップを発揮して、成果を確実にする。
◆第三者への委託も
第3は実益の創出に徹すること。改善成果の管理点を「時間と経費」の創出に置き、この成果に対する表彰制度を設ける。意欲の継続を図り、当たり前に改善活動ができるようにする。
これらは今すぐにでも可能な活動だ。このような活動を展開すると推進力として柱の必要性が理解できる。うまくいかない原因が経営の力不足なのか、リーダー不在なのか、社内の抵抗が強くて対応しきれていないのか。自社でうまくいかないときは、早期にニーズに合った実績のある第三者に社内改善を委託する必要がある。
次回はホワイトカラーの仕事ぶりについて解説する。
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【プロフィル】石橋博史
いしばし・ひろし 1962年、矢崎総業に入社。86年システム科学を設立し、現職。トヨタ生産方式や生産工学をもとにした業務革新の実践・支援ツール「HIT法」の開発、導入、コンサルティングを手掛ける。2010年2月、「業務プロセスの可視化法とチャート作成システム」で特許を取得。77歳。東京都出身。
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