遊技産業の視点 Weekly View

 □ホールマーケティングコンサルタント、LOGOSプロジェクト上級研究員・岸本正一

 ■プレーヤーに「大当たり」を経験させる重要性

 フィーバー機が登場する1980年よりも以前のパチンコ機は、発射した玉が盤面上部から下部に向かって、くぎとの衝突を繰り返しながら入賞口を目指して落下するスリルを楽しむというものであった。四半世紀を経て、現在のパチンコ機は大半が液晶画面を搭載。そこで繰り広げられるさまざまな演出は「大当たり」に至るか否かが楽しみの中心となった。

 メーカーの立場で言えば、液晶画面内で繰り広げられる演出の開発には、時間と労力と費用が伴う。利益率を上げたければこれらをカットすればよいのだが、そのような方向に業界全体がシフトしないところを見ると、これらの演出の重要性をメーカー、ホールの両者が認識しているといえる。だが、プレーヤーは演出だけを楽しんでいるわけではない。著名キャラクターが登場するシーンを見たければ、テレビアニメや漫画雑誌を見ればよい。そうではなく、パチンコ・パチスロという遊びの中でこれらの演出を見るということには、もっと別の意味が存在しているはずだ。

 この点について、私は「パチンコ・パチスロの演出の面白さとは、大当たりの発生と極めて密接な関係がある」とみている。何らかの演出が液晶画面内で繰り広げられた結果、それが「大当たり」に達するかどうか。信頼度や期待値などと呼ぶこともできるこの関係性の維持こそが、演出の有効性を担保している。当然のように聞こえるかもしれないが、「小当たり」「出玉なし当たり」などの普及を見る限り、ここへの関心が希薄化している懸念を払拭できない。

 この有効性をプレーヤーが「実感」するためには、「大当たり」の楽しさそのものをプレーヤーが経験する必要がある。任意の演出が実際に大当たりにつながったという喜びや発見は、情報誌やガイドブックに記載されている遊技説明よりもはるかにリアルなものだ。「保留が金色になると大当たりの期待大」と説明書で読むだけでなく、これを実体験することでリピート遊技の可能性は格段にアップする。

 遊技機に搭載される多種多様な演出は、大当たり経験が伴うことで本当の有効性を発揮すると考えたい。

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【プロフィル】岸本正一

 きしもと・しょういち 1963年生まれ。元SEの経験を生かし、遊技場の集客メカニズムを論理的に整理・研究する傍ら、全国のパチンコホールを対象にコンサルティングを行う。雑誌への連載やテキストの出版、セミナーでの講演なども手掛ける。オベーション代表。