横山敬一 味の素ゼネラルフーヅ会長(9)
トップの素顔■関西の食文化に合わせ新商品開発
2001年、取締役になり大阪支社長に就任しましたが、当時の取締役は30人の大所帯でした。その2年後、味の素は執行役員制度を導入。取締役は10人強に削減され、取締役会としての機能が強化されました。
◆関西も一つ一つ
関西で生活するのは初めてでしたが、関西人は陽気なラテン気質なため、すぐになじみました。各地の多様性を目の当たりにして、「関西も一つ一つ」の意を強くし、地域密着のエリアマーケティングの強化に乗り出すことにしました。そして取り組んだのが、今回も「だし」。1968(昭和43)年に発売された「ほんだし」は、かつお風味が中心。かつお節と昆布でだしをとる関西では、長年やや苦戦していたのです。そこでかつお節と昆布の合わせだしを製品化したらもっと使っていただけるのではと考えました。
通常なら本社マーケティング部門に商品開発や広告、販促を依頼するところですが、これを支社主導でできないか。支社には営業部門しか経験していない人も多く、自分たちで商品を作り上げることを通じた能力開発と、何より商品づくりの喜びを体験させたかったのです。幸い所管の事業部長が同期で快く了承してくれ、全面的なバックアップを得ることができました。プロジェクトチームを作り開発を進め、「ほんだし かつおとこんぶのあわせだし」は完成しました。
CMは、吉本興業さんにご協力いただき、関西のノリをたっぷり盛り込んだものに。カツオと昆布の着ぐるみを着た辻本茂雄さんと山田花子さんが大きな鍋に入り替え歌を歌うものでした。
少しハメをはずしすぎたかと心配をしていたら、案の定、阪神間の山の手の方から「品がない」というクレームも。ところが大阪の方からは好評をいただき、「関西は一つ一つ」と、改めて実感しました。
CMに関してはその10年後、「クック・ドゥ回鍋肉」でも似たようなことがありました。
「とと姉ちゃん」の妹役を演じるなど活躍中の杉咲花さんが、音を立てて食べるシーンに多くのクレームをいただく一方で、爆発的な売り上げに。実は、私は事前に音を小さくするように指示したのですが、こだわって制作した広告担当は「わかりました」と返事したものの、そのまま流していたようです。さじ加減は難しいのですが、少しクレームが来るくらい、何か訴えるものをしっかり持ったCMが消費者の心に響くのだと実感しました。
その後、「あわせだし」は順調に売り上げを伸ばし、味の素唯一のエリア商品としてしっかりと貢献してくれました。吉本興業さんとは、なんばグランド花月の緞帳(どんちょう)に「ほんだし」のロゴを入れていただいたことでご縁ができ、関西エリア番組を味の素、味の素ゼネラルフーヅの提供で制作。芥川賞作家の又吉直樹さんとのご縁もいただき、大変ありがたく思っています。
◆西に確固たる拠点
新支社ビルの建設も思い出に残る仕事です。西天満にあった大阪支社は、屋上に赤いお椀(わん)のネオンサインのある重厚な建物でしたが、80年近くたっており老朽化していました。本社が移転候補地を中之島に探してきてくれ、プロジェクトを組みプランを練りました。新支社は、免震構造の事務所棟と駐車場棟のツインビルにグループ全社が集結し、西の確固たる拠点に。東京に有事の際は、本社経営メンバーが移動してきて仕事が継続できるよう最低限の設備や仕組みを作りました。
お客さま自身が調理できる大型のキッチンルームや西日本最大の“食の図書館”を併設し、一般に開放した点も新しい試みです。当時の江頭邦雄社長が「新ビルができてすぐに転勤はかわいそうだから」と、3年大阪支社で勤務し、関西は愛着のある土地になりました。
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