横山敬一 味の素ゼネラルフーヅ会長(10)
トップの素顔■常務就任 国内営業の高度化推進
14年ぶりに本社に戻り、2005年に常務になりました。担当は国内営業と関連会社。全国の得意先との関係構築のための行脚が始まりました。日本の人口減少が始まり、65歳以上が20%を突破。国内市場は縮小していくという先行きに対する不安を得意先は皆持っていました。メーカーのみならず流通を含めて収益的にも苦しい中、業界再編により卸、小売業の大手集約化が進み、小売業のバイイングパワーが強まって、プライベートブランドの売り上げも増大していきました。
◆革新に取り組む
それに呼応するかのように、メーカーでのM&A(企業の合併・買収)も顕在化。競争は激化し、従来型のアプローチでは手詰まりの状況でした。また、当時の営業部門ではベテラン層の大量定年退職により急激な若返りが進行。営業担当の3割が入社1~3年生で、翌年には4割弱になるという中、人材育成や、経験が短くても高度な提案ができる仕組みづくりが急務となっていました。この局面を打開すべく取り組んだのが「営業革新」です。
06年早々にプロジェクトを立ち上げ、1年後に全員参加の活動に展開していきました。今までと仕事のやり方を変えようと考え、営業は単に商品を販売するのではなく、市場や顧客との最大の接点として商品の持つ価値をしっかりと伝えることがミッションだと繰り返し徹底しました。
そのために、開発、生産、マーケティングなどのすべてのバリューチェーンを深く理解し、顧客との接点で新たな需要を創り出す力を持たなければならないとも訴えました。これを実行するため、スーパーの店舗ごとに提案ができる食品業界初のシステムや、それを推進する「マーケットクリエーター」という新しい職種をつくり、営業の高度化を図ったのです。
この先進的な取り組みに対して、若手の営業から反発があったのは意外でした。考えてみれば、ベテランから引き継いだ顧客の対応で手いっぱいの彼らにとって、新たなものは簡単には受け入れられないのも当然です。
さまざまな意見を交わしながら、この活動を徐々に、しかし確実に進め、これが力になるという事例が広がるにつれて、ある時期からは加速度的に進み始めました。
◆転がりだした重い石
まさに大きな重い石を坂の上から転がすように、スタートは大変でしたが、転がり始めると生命を得たように自らスピードを上げて進んでいったのです。成功事例は全社で共有され、それが新たな提案の連鎖となり、若手が急速にたくましく成長して営業組織全体の力が強くなっていくのを実感しました。
この活動は内容を充実させながら進化し続け、味の素の国内事業の力の源泉の一つとなっています。特に家庭用や外食用、加工用と顧客に応じて別々の営業体制はとっていますが、最終的には同じ生活者、消費者に向けた仕事であるということで「BtoBビジネス」も「BtoBtoC(消費者)ビジネス」と位置づけ、家庭用、外食用、加工用が横断的な取り組みを開始。活動はその後、食品事業にとどまらずアミノ酸などの非食品事業にも拡大していきました。
当時非連結会社まで単純合計すると食品事業は1兆円近い規模に。07年には大阪支社時代に親交を深めたヤマキもグループに入ってくれました。
関係会社は、冷食、飲料、コーヒー、油脂、調味料などの事業会社や、物流、プロモーションなどの機能会社がありましたが、これらを束ねる会議体を立ち上げ、テーマ別の分科会に参加してもらう取り組みを始めました。徐々に活動が本格化し9年たった現在では、味の素のグループ経営に欠かせない存在となっています。
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