横山敬一 味の素ゼネラルフーヅ会長(11)
トップの素顔■100周年を機に改革にチャレンジ
2009年、味の素は創業100周年を迎え、伊藤雅俊新社長が誕生。その後任として専務取締役食品カンパニープレジデントに就任しました。100周年に合わせて「味の素ルネッサンス」と銘打ち、「味の素」を発明、事業化した創業の精神を再確認するとともに、「うま味」が持つ、消化促進などの栄養・生理機能の啓蒙(けいもう)活動を推進。「UMAMI」は着実に世界に浸透していきました。
一方、多くの企業と同様、リーマン・ショックで原材料や為替相場変動の影響を大きく受け、また減損もあり、08年度決算は最終赤字に。危機感や一体感の薄れ、内向き志向など大企業病的な課題も感じ始めていました。
◆ロングセラー復活
バブル崩壊後の日本経済の低迷の中で、伝統ブランドも苦しく、新製品も今ひとつ。次第に守りの体質になっていました。そこで創業101年を機に、人と組織の体質強化や既存事業の強化を図る一方、次の100年の柱になる新事業、新製品の創出を目標とする「101チャレンジ」に取り組み始めたのです。
まずは働き方の改革から着手しました。開発・生産・マーケティング・営業の壁を取り除き、部門間の交流を活発化させ「タコツボ」をどんどん壊していきました。70点のプランができたら実行し、その中で100点に仕上げていくという進め方でスピードを上げ、現場での課題発見、解決を求めました。この結果、食品部門内のコミュニケーションは大幅に活発化し、いろいろなアイデアが化学反応を起こし始めたのです。
「ロングセラーも若い人には新製品」と考え、新たな切り口での提案を強化。伸び悩んでいた発売50年の「コンソメ」や、発売30年を超える「中華あじ」や「クック・ドゥ」が、11年に過去最高の売り上げを記録して再成長軌道に入り、利益もV字回復を果たしました。「ほんだし活用術」や「クノールスープ」の「つけパン・ひたパン」など、新しい食べ方の提案も大きな成果に。新製品も、「鍋キューブ」や「香味ペースト」「クック・ドゥきょうの大皿」などが他社にない独自の技術で新しい価値を提供し、次の柱として成長しています。「国内市場も掘って掘って掘りまくればまだ宝の山」と言い続けてきましたが、このようなお客さまに寄り添う取り組みが成果となって表れるとともに社員の顔にも自信があふれ、大きな手応えを感じました。
国内食品事業がロングセラーの復活で増益基調となり、全社を牽引(けんいん)する一方、海外事業は途上国での新市場開拓を加速しました。「味の素」が消費者に全く知られていないエジプト、バングラデシュ、トルコでは「味の素」を使った各国の家庭料理を作り、試食してもらうことから始めました。一つの市場(いちば)を開拓して、さらに次の市場へ。まさに、地をはうような現金直売の営業活動です。こうして新たな拠点はカンボジア、ラオス、そしてアフリカのコートジボワール、カメルーンなどに広げていきました。事業規模の大きなタイ、インドネシア、ベトナム、ブラジルなどの主要国では市場の深耕を進め、大規模な新工場を建設し、海外事業の収益は国内食品に肩を並べるまでに成長しました。
◆AGF社長に就任
東日本大震災やタイの大洪水などの試練もありましたが、100周年を機に国内は新価値創造型へ転換し、海外も各国の経済成長を上回る伸びを実現し、ともに利益をほぼ倍増できたのも世界各地の1万4000人の社員の努力のおかげです。激励のため、年に20カ国程度の海外出張を含め、国内外を飛び回りましたが、忙しくも充実した4年間でした。そして13年6月、味の素ゼネラルフーヅの社長に就任することとなりました。(月~金曜日掲載)
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