横山敬一 味の素ゼネラルフーヅ会長(12)

トップの素顔
芥川賞作家・又吉直樹氏とは、TV番組をはじめ数々のコラボレーションを実現(右が横山会長)

 ■「ボリュームからバリューへ」改革推進

 味の素ゼネラルフーヅ(AGF)は、外資100%のゼネラルフーヅ社に、1973年味の素が50%資本参加し設立。合弁事業としては唯一、日本で成功した食品企業です。私がAGFの社長に就任した2013年はちょうど創業40周年を迎えていました。ボトルコーヒーやスティックコーヒー、そしてインスタントコーヒーの袋化などで新たな市場を創造し、売り上げが10年間で1.5倍になるなど、高い成長を実現していました。

 ◆独自の企業文化

 両親会社からの人材派遣は少数で、組織はコンパクトでファイティングスピリットにあふれ、スピーディーな実行力を持つのが大きな強み。製品開発力、マーケティング力、そして営業力で、お客さまの強い支持を得ていました。味の素とはひと味違う独自の企業文化を持っていたのです。ただ売り上げの伸びに比して収益性には課題がありました。コーヒー生豆の相場は気候変動や投資マネーなどの要因で大きく変動し、業績にも大きな影響を与えるため、経営も短期志向の傾向がありました。

 また熾烈(しれつ)な競争の中で、売り上げを第一優先しがちでした。成長を保持しながら収益力をいかに高めていくか。ここまで育ててくれた味の素グループへ恩返しのつもりで、これまでに得た全ての知見をつぎ込もうと考え、最後の挑戦が始まりました。

 まず取り組んだのが経営の実態を全社員に知ってもらうことでした。2カ月間で全国全ての事業所を回り、特に事業構造や収益面の詳細な説明を行いました。非上場でもあり、それまで社員にはあまり詳しい情報が与えられていない中、初めて聞く話に「なるほど。そうだったのか」と大きなインパクトを受けた社員も多数いました。

 「現実直視」「課題共有」。この深さが次のステップ、目標設定と実践へのベクトルの角度を上げると考えたのです。そして翌年をスタート年とする3カ年計画、2020年ビジョンの策定を行いました。

 AGFファンの拡大を大目標に「ボリュームからバリューへ」の方針を掲げ、収益力を高めるためにトップブランドのスティックコーヒーなどのパーソナルタイプや、プレミアム商品の比率をアップ。家庭用中心から1桁であった業務用の比率を3割に上げる構造改革に着手しました。またシミュレーションが可能なきめ細かい利益管理制度を導入することとし、全社が「利益ベースの経営」へ転換できるようにしました。組織は外資の影響もあり、社長・副社長を中心とする文鎮型で、機能ごとの独立性が高く、多くの壁が存在していました。トップダウンから全員経営の方向へ転換するため、翌年には3本部制とし、本部長に権限と責任を持たせ、事業を軸とした一気通貫体制としました。また、異動が少なかったため一人一人の新たなチャレンジを期待して、6割の社員の人事異動を敢行しました。

 社内の情報共有を強化するために、Web版の社内報を製作し、3年間で500号を超える本数を発行。このような取り組みで組織の壁をなくし、社内が一体化できるように改善しました。

 ◆エリアを深掘り

 また、小売業も個店経営を強化するなか、エリアにより密着した取り組みも推進しました。日本におけるコーヒーの飲まれ方について大規模な調査を行った結果、驚くほど地域差があることがわかりました。例えば北海道ではレギュラーが好まれますが、隣の青森ではインスタントが好まれたり、地域性があります。この調査結果を使い、エリア別、店別に提案ができる「AROMAシステム」を導入しました。他社にはない深い提案力を携えて、従来の強い営業力がさらにパワーアップしていったのです。