横山敬一 味の素ゼネラルフーヅ会長(13)

トップの素顔
上賀茂神社の式年遷宮記念文化事業発表会(右から原田知世さん、門川京都市長、田中宮司、横山会長)

 ■「T2ACMI焙煎」技術と日本の「水」

 味の素ゼネラルフーヅ(AGF)の顔といえば原田知世さんです。「ブレンディ」のCMに20年間出演していただいていますが、同一ブランドへの出演時間として日本一ということです。原田さんの変わらぬチャーミングさで、「やすらぎ」という一杯のコーヒーの持つ価値を「いつでも、ふぅ」というフレーズにのせて伝え続けているのはAGFの強みです。また、AGFに着任し、大きな可能性を感じたのが技術開発力です。独自の抽出技術や世界で唯一の水に溶ける造粒技術などがあり、「おいしさの科学」で日本人の味覚に合うおいしさを追求していました。特にコーヒー豆の焙煎は複雑な化学反応の組み合わせで、焙煎豆の色や香り、酸味、苦みが変わってきます。

 これを細かくコントロールすることで、苦み・酸味のバランスを取りながら香りを最大限にするなど、お客さまのさまざまな要望に応えることができます。そこで、秒単位で温度を制御できる焙煎機を導入し、蓄積された多くの知見を投入した「T2ACMI焙煎」を完成させました。この技術に日本のおいしい軟水を合わせることで、AGFの挑戦は大きく広がっていったのです。

 ◆“だし屋”の経験

 日本食の基本は「だし」にあり、その「だし」の繊細な風味は軟水でしか出せません。そして39年間の“だし屋”の経験から、コーヒーも同じではないかと考えたのです。日本で売られている硬度の異なる水で淹れて飲み比べたところ、味わいが全く違いました。日本のおいしい軟水で淹れると、香り高い繊細なコーヒーが生まれたのです。これを“JapaNeeds Coffee”と銘打ち、「日本の水で、たくみに香る」というキャッチコピーとともに製品を刷新していきました。

 日本の「水」に着目したことがきっかけとなり、さまざまな取り組みへと広がっていきました。ひとつは、京都の上賀茂神社式年遷宮記念文化事業への協賛です。上賀茂神社には、いにしえから大切にしている「神山湧水」が流れています。この水に合う「神山湧水珈琲」を開発し、式年遷宮にまつわる行事の参加者や参拝客に振る舞い、好評を得ました。そして、ここからヒントを得た新ブランド「煎」が生まれました。

 また、「和」という共通性から日本和菓子協会とコラボレーションし、全国47都道府県からコーヒーに合う和菓子を選出するプロジェクトに取り組んでいます。日本の伝統文化とコーヒーの融合という、今までにないチャレンジが、“JapaNeeds Coffee”に勢いを与えてくれました。

 さらに、日本の水への感謝の思いを込めて、「ブレンディの森」づくりの活動を行っています。主力工場である三重県の「AGF鈴鹿」、群馬県の「AGF関東」の源流域の森で間伐を行い、杉の苗木を植え、健全な森を守り育てるための作業を行い、これまで1700人以上の社員が参加しました。

 ◆サミットで公式提供

 「T2ACMI焙煎」技術は、家庭用商品のみならず、業務用の「AGFプロフェッショナル」やコンビニエンスストアのカウンターコーヒーにも導入を進め、「技術力のAGF」との評価が徐々に高まっているのを感じています。鈴鹿に工場があるという縁もあり、今年の伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)では、公式コーヒーとして採用され海外の方に日本のコーヒーの繊細な味わいや品質、それを生かす水のおいしさを知っていただく機会になりました。そのほか、環境や社会への貢献として、サスティナブル認証コーヒー豆の比率を30%にまで引き上げたり、東日本大震災で被災した窯元の復興のお手伝いに、継続的に取り組んでいます。