スマホ「0円販売」やまず 「現場の施策」隠れみの…総務省と“いたちごっこ”再び
総務省が4月に適用を始めたガイドライン(指針)で携帯各社に求めた、スマートフォンの「実質0円」販売の是正が、有名無実化している。販売現場では米アップルの最新機種「iPhone(アイフォーン)7」も含めて「0円」があふれているが、携帯各社は指針に抵触しない「販売店の独自施策だ」と繰り返す。ただ、0円販売につながる携帯各社の端末購入補助が「販売店の施策」を隠れみのに今も続いているとの情報があり、総務省は行政処分など新たな対応に乗り出す構えだ。
17万円還元アピール
今月8~10日の3連休、東京都西部の携帯各社の販売店や家電量販店の店頭には「0円」をアピールするポスターが多数、掲示されていた。中でもソフトバンクの販売店は「17万円現金還元」を大きく掲げており、店員は「ソフトバンクからこれまでに渡されていた端末販売奨励金で割引している」と話した。いずれの店舗でも、古い端末の下取りや光インターネットとのセット契約など、指針に抵触しない条件が示されており、携帯各社も問題は無いという認識を示している。
総務省は、携帯各社の多額の奨励金などの端末購入補助が料金高止まりの原因とみており、販売店が独自で行っている割引施策は指針の適用外とした。しかし、販売店が自腹を切って割り引いているのか、携帯事業者による多額の奨励金を原資にした割引なのか実態は把握しにくい状況となっている。
総務省の有識者会合のあるメンバーは、指針適用後、端末購入補助名目の奨励金は各社が減らしているため、別名目で奨励金を販売店に渡し「『これで割引しろ』と言って、販売店独自の割引名目で0円販売が続けられている」と指摘。携帯事業者が販売店による割引を悪用していると憤る。
きょう議論再開
指針適用後、総務省は各社に4月に行政指導を行ったほか、5月以降も口頭注意や文書注意などを繰り返し行ってきた。今月7日には、端末購入割引に使える電子マネーやクーポンを送付していたとして指導よりも重い行政処分を発表。月末までに各社に対して、再発防止策や、この手法と同様に店頭でオープンにしていない、指針に抵触する割引手法の報告を求めている。報告内容によってはより厳しい処分を科す可能性もある。
同省幹部は、指針に抵触する端末購入補助が現在も横行している状況を把握しているとした上で、「確認できていないものについては携帯事業者からの報告で裏を取りたい」としており、有識者の中には「報告内容に虚偽があった場合は、営業停止もあり得る」との声もある。
13日からの有識者会合では携帯販売の実情などが改めて議論される見通し。いったん沈静化したように見えた「0円」販売をめぐる携帯各社と総務省の“いたちごっこ”は、再び緊迫感を増している。(大坪玲央)
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