横山敬一 味の素ゼネラルフーヅ会長(14)

トップの素顔
日本ギフト大賞授賞式に臨んだ審査員の早稲田大学の鎌田薫総長(左)と横山会長

 ■心に火をつけるリーダー目指して

 2015年4月、味の素グループは米国のパートナーが持つ50%の株式を取得し、味の素ゼネラルフーヅ(AGF)は味の素グループの100%子会社になりました。AGFの社員にとっては創業以来最大の出来事で驚きを隠せません。今後に対する不安と期待が入り交じる中、全事業所を回り説明会を開きました。

 ◆味の素100%子会社に

 そのなかで今回の100%化を『第二の創業』と位置付け、AGFの独自性と強みを生かしながら、味の素グループとのシナジーで事業を強化し、事業領域や地域の拡大を図っていくことや、合弁契約上制約のあった味の素グループとのR&D(研究開発)の融合、そして国内に限定された事業が全世界に広がることを理解してもらい、どこか閉塞(へいそく)感を感じていた社員に将来の展望を与えました。幸いAGFに来てからの2年間で、仕事のベースは味の素とそろえてきていたため、シナジーの追求に、すぐに取りかかることができました。味の素ではすでにタイ、ベトナム、ブラジルなど5カ国でコーヒーや嗜好(しこう)飲料の事業を行っていましたが、これらの強化とともに、味の素が事業基盤を持つ新たな地域への拡大にもAGFが参画することになりました。また、AGFのR&Dや生産部門がグローバルのセンターとして機能していくことも、社員の大きなモチベーションになりました。人材交流も活発化し、AGFでも海外ビジネスを皮膚感覚でわかる人材を育成するため、すでに3人が味の素の東南アジア法人で働いており、毎年拡充する予定です。

 また、味の素のギフト事業をAGFに統合したことも信頼の証となり、社員をますます奮い立たせました。ギフトは6年ぶりにCMを再開。「コーヒーギフトはAGF」というフレーズが企業メッセージ調査のTVCM部門でトップとなり、2年連続ギフト大賞を受賞するなど大変、活気づいています。この『第二の創業』はその後順調に進展しています。味の素からAGFに着任し、駆け抜けた3年間でしたが、2年連続で過去最高益を更新し、企業としての体力は大幅にアップしました。そして何よりうれしいのは、「会社としての存在感が格段に上がった」「自分の会社が誇れる」といった、社員の声と自信に満ちた表情です。たくましくなった社員一人一人の姿を見るにつけ、よく頑張ってくれたと感謝の気持ちでいっぱいになります。

 ◆ココロ、カラダに貢献

 今、AGFは「ココロ」と「カラダ」の健康に貢献する、日本発マルチナショナル嗜好飲料企業を目指しています。グローバルな巨大市場の中で今後、品田英明社長のリーダーシップのもと、各国独自のコーヒー文化をベースに、日本で、そして世界でお客様に愛される企業として大きく発展していくことを確信しています。

 振り返ると、社会に出て43年。入社時の売り上げ2000億円から1兆円を大きく超える味の素グループのグローバルな成長のなかで、先輩、同輩、後輩と共に、何らかの足跡を残すことができたのは大変幸せでした。ただ、優秀なリーダーであったかというと自信は持てません。尊敬する、今は亡き味の素の社長・会長を務めた江頭邦雄氏から教えらえた言葉をいつも反芻(はんすう)します。「凡庸なリーダーはただ命令する。良いリーダーは説明する。優れたリーダーは範となる。偉大なリーダーは心に火をつける」。「辿(たど)り来て未(いま)だ山麓」、これからも一歩ずつたゆみなく歩き続けていきたいと思います。

 最後になりますが仕事中心の私を支え、家庭を守ってくれた妻には心から感謝しています。また、2人の娘夫婦と3人の孫には変化し続ける世界を舞台にたくましく、しなやかに生き抜いて欲しいと願いつつ、筆を置かせていただきます。(おわり)