石橋博史システム科学社長の処方箋
ホワイトカラー革命■革新実現に至る5つの方法
企業の永遠の課題である「ホワイトカラーの革新」を実現して競争優位を築き、維持・継続できる仕組みづくりを行う。具体的には、業務プロセスの可視化法によって、改善が容易になる3つの活動要素、つまり業務が「見える」「測れる」「改善できる」ための基盤をつくり、その精度を高めながら、課題を突破していく。
課題解決方法を5つ挙げる。
(1)変革基盤活動を推進して活動3要素の水準を高める。改善を仕事の一つと位置づけて活動レベルを維持する。
(2)業務情報データベースの基本となる業務管理点マニュアル(電子マニュアル)の精度を高めつつ、「いつ」「どこで」「何を」「誰が」「どのように」といった必要な情報をリアルタイムに画面から得られる仕組みを構築する。
(3)活動3要素と電子マニュアルを基に「業務量の偏り」対策をする。日、月、四半期、半期、1年で観察すると業務量の偏りは必ず発生している。
(4)人材の多能化育成方法の活用。最良な方法であり、実務の多能化訓練と活用法について、実例を紹介する。
可視化法の分析により業務全体の約70%を占めるルーチンワーク(定常業務)について、電子マニュアルを活用して計画的に自部署の業務からOJT(職場内訓練)を始め、順次全部門に広げていき、忙しい部署を応援する。応援した場合は時間分の賃金を支払う仕組みを作る。多忙な部署を基準にする要員配置に比べ、基準を下げて要員を配置でき、部門の利益とともに全社的な収益力の向上にも貢献することになる。
この育成活動によって社内人脈が増え、部門の壁を越えた協業活動につながったり、視野が広がったりすることで仕事の仕方に変化が見られる。また、業務の30%を占める非定常業務の「考える」「判断する」という専門性を発揮する領域の広がりが見られるなど、他部署にかかわることなど考えられなかった管理・技術などの部門が他部門に対して協力的になり、相互に対話が活発化する姿も見られるようになる。
(5)役割と分担の明確化で本来の組織活動が活性化する。
役割と分担があいまいなために課長の職務内容がわからないまま、プレイングマネジャーとして働くことをやめる。
マニュアルから業務機能の現実的な理解が進み、定常業務は担当者に任せ、課長はおおむね方針の遂行と業務のQCD(品質、費用、納期)のレベル管理および不具合対応、異常・例外処理、部下の育成など本来の業務であるマネジメントに力が入れられるようになる。
これら5つの課題が業務プロセスの可視化法およびチャート作成システムによって解決でき、経営資源、特に人材の「最少投入で、最強組織をつくる」ことができるようになる。
この活動の原点は、一人一人のモラルを高め、強力な組織力を発揮できる環境をつくって生産性向上に寄与することにある。ホワイトカラーにふさわしい先導役を担えるようになる。
次回は、業務プロセスと人工知能について考える。
◇
【プロフィル】石橋博史
いしばし・ひろし 1962年、矢崎総業に入社。86年システム科学を設立し、現職。トヨタ生産方式や生産工学をもとにした業務革新の実践・支援ツール「HIT法」の開発、導入、コンサルティングを手掛ける。2010年2月、「業務プロセスの可視化法とチャート作成システム」で特許を取得。78歳。東京都出身。
関連記事