「リアルでは不可能な演出」「可愛く見えるキャラとは」 ゲーム各社が見るVRの可能性
プレイステーションVRの発売もあって注目を集めるVR(仮想現実)。9月に開かれた東京ゲームショウ2016でも、講演や出展で数々のVRが取り扱われて盛り上がる状況を示していた。「VRマーケットの展望」という基調講演では、ゲーム開発者やVRプラットフォーム企業のキーマンが登壇。これからのVR市場がどうなるが各人から示された。
講演にゲーム開発者として登壇した3人。カプコンの伊集院勝氏は、「KITCHEN」「バイオハザード7」「特撮体感VR 大怪獣カプドン」といったVRタイトルを開発していることを紹介した。続いてセガゲームスプロデューサーの林誠司氏が、「初音ミクVRフューチャーライブ」を紹介した。
この「初音ミクVRフューチャーライブ」について林氏は、「目の前にミクさんがいる夢にまで見たシチュエーション」が実現していることをアピール。「VRだから現実世界の制約を受けない演出が可能になる」と訴えた。同じライブ空間をとらえた映像でも、歌い手に近寄って見たり、会場の中にホログラフを登場させたりといった、リアルなライブでは不可能な見方を楽しめる。それがVRの良さだという。
バンダイナムコエンターテインメントから登壇したプロデューサー/ゲームディレクターの玉置絢氏は、「サマーレッスン」というプレイステーションVRと同時リリースされるタイトルを紹介。広い空間を隅々まで作り込んで自由に動き回れるようにする、一般的に考えられているVRとは反対に、「ひとつの世界、ひとりのキャラクターを徹底的に表現する」ことにこだわったと話した。難しいステージをクリアした時のような爽快感はないが、日常生活の中に現実にはいないキャラクターがいて、肌身に感じていられる面白さがあるという。
話題となる一方で、技術的にも発展途上にあるだけに、VRコンテンツを作る難しさを各社とも抱えている様子。カプコンの伊集院氏は、「『バイオ7』はVR対応にする予定はあったが、全編VR対応と言われて、そこからが苦難の始まりだった」と話し、「操作性やプレイヤーの行動、演出部分、ライティングなどありとあらゆる部分を再調整し直す」ことになったと明かした。
玉置氏は、「画面で見たら可愛いが、VRの中に入ると人間に見えないことがある」と、開発して分かったポイントを明かした。「生まれてからずっと見ている人間について、お客さんは目が肥えている」。そのため、人間に見えるようにするにはどうしたら良いかを考え、ベストな姿を探っていったという。
「今までのゲームで魅力的なキャラを作るというのは、記号的に格好良いものや可愛いものを詰め込むことだったが、現実にそんな人間はいない。分かりやすい魅力の付け方が難しい」と玉置氏。魅力とはどういうことかを考えるところからスタートして、作り込んでいった結果が、「サマーレッスン」を遊ぶプレイヤーにどう受け入れられるか。注目が集まる。
VRには課題もある。伊集院氏は、「いろいろなタイトルを作りたいが、ノウハウや技術が足りないことを痛感している」とのこと。「新しい遊びを作りたいと思っているが、それを実現するための仕組みが作れない」。ただ、技術が先行してもアイデアがなければ意味はない。経験から蓄積したアイデアを形にするため、さまざまな技術を模索していくことになりそうだ。
林氏は、「いかに臨場感を高めようとしても、空気感をどこまで表現できるか」に課題を抱えているという。「それを補うために、VRライブ空間でしかできないものを作る」とも。リアルとバーチャルの融合によって、新しいエンターテイメントを作る気概を見せていた。
「ノウハウが発展途上」であることを挙げた玉置氏。「描画や演算の仕組みはゲーム用に作られている。VRならこの処理はいらない、ということもあるかもしれない。ゲームを作るために用意されているものから、VRを作るためのものにカスタマイズしていく必要がある」と話し、これまでの経験や蓄積を変える必要性を訴えた。
逆にVRの可能性について問われて、玉置氏は、「プレイヤーはどういう心理状態にあるのかを解析したインタラクティブなコンテンツが増えていくことになりそう」と予測した。林氏は、「VRの空間は自分だけの体験だが、同時にたくさんの人の体験でもあるというところに広がっていけば」と指摘。「となりでモブの人たちがライトを振っている。そこにいずれ、誰かが入っているようになるかもしれない」。
伊集院氏は、「バーチャル空間にひとりでなく大勢で入るようになり、コミュニケーションの強化が前面にでてくれば、可能性が広がる」と話した。「バイオハザードはひとりでやるゲームだが、複数でできても面白い。本当に怖いと思っているところに怖さを共有できる」。
問題や課題を解決しながら、面白い要素を追究していくことで、VRが本当に受け入れられるエンターテインメントになっていく。そんな状況がこれから先、進んでいきそうだ。
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