バイオハザード最新作は「思わず身を引く怖さ」 ファンの親しみ排除し恐怖徹底
「サバイバルホラー」というジャンルを開拓したゲーム「バイオハザード」シリーズは今年、平成8年の第1作発売から20周年を迎えた。洋館に閉じこめられた主人公が恐怖と絶望の中、ゾンビと戦い抜くという内容で、全世界でシリーズ累計6900万本を販売したカプコンの看板作品だ。その世界観は映画や遊園地のアトラクションにも展開されている。作り手が追い求めたのは、恐怖とそこからの解放感だという。(織田淳嗣)
親しみは排除
千葉市の幕張メッセで9月開かれた、世界最大のゲーム見本市「東京ゲームショウ2016」。多くのファンが「バイオハザード7 レジデントイービル」体験版の前に列をなした。ソニー・インタラクティブエンタテインメントの「プレイステーション4」など向けに来年1月に発売される最新作だ。
「うわー、なんだこれ」。ゲームに興じる人たちから悲鳴が上がる。VR(バーチャルリアリティー=仮想現実)に対応しており、専用のゴーグルとヘッドホンを着けてゲームをスタートすると、あたかも別世界に入り込んだような感覚が味わえるのだ。
記者も体験したが、「どこからかゾンビが追ってが来るのではないか」との恐怖が高まり、実際に老婆が眼前に迫ってくる気持ちの悪さには思わず身を引いた。
「今回の作品では『恐怖』の原点に帰った」とプロデューサーの川田将央氏は胸を張る。主人公は過去のシリーズに登場した警察出身の「レオン」や「クリス」といった屈強な男性ではなく、特殊な能力を持たない女性。長年のファンが持っている「親しみ」を、恐怖のためにあえて排除したという。
恐怖と解放の波
バイオハザードでは何を「恐怖」と感じるかを追求し続けてきた。
第1作ではゾンビに向けて銃を撃った後、薬莢(やっきょう)が床に落ちる音までを再現した。倒した敵は画面から姿を消すというそれまでのゲームの常識を排し、あえて姿を残して「再び起き上がってくるのでは」との恐怖感をプレーヤーに与えた。
さらに、ただ逃げるだけではなく、途中で銃やナイフなどさまざまな武器を手に入れて敵と戦うのも大事なポイントだ。マシンガンを手に入れたときの安心感は大きい。「最初は恐怖に陥るが、戦える力を蓄え、敵を倒すカタルシス(解放感)までが味わえる」(川田さん)。
しかし、安心した直後にまた、恐怖に陥る展開が仕込まれている。「この一連の“波”を作ることが大事なんです」と川田さんは力説する。波に翻弄されながら、プレーヤーはゲームにのめり込んでいくのだという。
国ごとで色分け
作品は海外でも人気が高い。特に北米は「ジョーズ」などホラー・パニック映画を育ててきた中心地でもあり「重要な市場だ」とカプコンの辻本春弘社長は強調する。市場調査や販売促進を重ね「子供だけでなく、大人も楽しめる内容にすることに挑戦してきた」という。
苦心したのは、ナイフや銃でゾンビと戦う場面での描写だ。恐怖を追求する上でリアルな残酷さは欠かせないが、あまりに暴力的な表現は規制を受ける。
過去の作品のドイツ版では、ゾンビが流す血は緑色にした。当時、同国では流血を赤色で表現することは規制されていたためだ。
さらに文化の違いも考慮する必要がある。日本国内向けの作品はゾンビの体の部位を切っても身体が欠損しないよう表現を抑える傾向があるが、北米向けでは欠損する描写を残している。国ごとに“色分け”しながら、支持を広げてきたわけだ。
作品は米ハリウッドでも映画化され、シリーズ化にも成功。年末には最新作が上映される。25年からはテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ、大阪市)で毎年、期間限定の人気のアトラクションとしてバイオハザードが登場するようになり、人気を博している。
川田氏は「怖い体験をし続けてもらうために、イノベーション(革新)を躊躇(ちゅうちょ)しない作品づくりをしていきたい」と話している。
関連記事