ファミマ、食品ロスを液体飼料化 リサイクル対象1000店に拡大へ
コンビニエンスストア大手のファミリーマートが店舗から排出された食品残さを飼料にリサイクルする取り組みに挑んでいる。同社が食品廃棄物の有効な再利用法として展開しているのがリキッド・フィード(液体飼料化)による食品リサイクルだ。
養豚業者にも利点
リキッド・フィードとは、食品ロスになる栄養価の高い食品廃棄物を発酵させ、液状になった発酵飼料を豚などに与えるシステム。ドイツをはじめ欧州で広く取り入れられているエコで高効率のリサイクルとして、日本でも注目が集まっている。
「エネルギー効率を考えると液体飼料化がベストな再利用法だ」(管理本部CSR・コンプライアンス部リスクマネジメント・コンプライアンスグループの新井弘之氏)と指摘するように、リキッド・フィードはリサイクルの工程で、加熱処理による乾燥などをしないため、二酸化炭素(CO2)が発生せず、地球環境にやさしい。CO2排出量は食品残さを焼却処分した場合と比べて、わずか150分の1で済むという。食品リサイクル工程において環境負担が少ないとされる理由の一つになっているようだ。さらに、飼料の製造コストが低いのも特徴だ。
メリットはそれだけではない。養豚業者にとっても利点が多い。リキッド・フィードは人間の食べ物のため、安全・衛生に優れ、しかもカロリーが高いことから、豚の成長が早まる。また、液体状のため、豚の消化器への負担が少なく、病気にかかりにくいという。
ファミリーマートは2009年2月にリキッド・フィードによる食品リサイクルを開始した。仕組みはこうだ。東京都内の一部店舗から排出される賞味期限切れの弁当やパン、菓子、牛乳、ジュースといった生もの以外の食品残さを回収し、積み替え保管場所に集めた後、食品リサイクル工場に運搬する。
食品リサイクル工場では選別機を使って、飼料になる資源と容器などの廃棄物に分別。固形原料と液体原料を配合し、これを発酵させてリキッド・フィードを完成させる。
リキッド・フィードは工場近くにある養豚業者に運び、これを豚に与える。ファミリーマートから出た食品残さは離乳後から60~70キログラムまでの豚の飼料になるという。
リキッド・フィードで飼育した豚はハムなどに加工されるほか、ファミリーマートの「豚焼肉丼」「豚生姜(しょうが)焼き丼」といった弁当や総菜パンとして販売している。同社のこの一連の取り組みは11年3月、農林水産省、経済産業省、環境省から「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)」に基づく再生利用事業計画(食品リサイクルループ)として認定された。
19年までに55%目標
良いことずくめにみえるリキッド・フィードによる食品リサイクルだが、課題もある。その一つはコスト面だ。コンビニ店舗から残さを回収するコストや食品リサイクル工場へ運ぶ運搬コストがかさむためだ。しかも、ドライバーの人件費が増加傾向にあり、廃棄物処理に関わるコストの上昇が続くことが予想される。
同社の管理本部CSR・コンプライアンス部付マネジャーの谷田部克巳氏は「食品残さを焼却する場合の廃棄コストと同等の料金でなければ、食品リサイクルの進展は難しい」と心情を明かす。
食品リサイクル率の目標達成も課題だ。同社の15年の食品リサイクル率は50.5%。19年までに55%にまで高めなければならない。
同社は目標達成に向け新たな食品リサイクルループの構築に着手した。収集運搬業者数や積み替え保管場所を従来の2~3倍に増やし、これまで展開していたエリアを横浜市などにも拡大。従来の食品リサイクルループの対象店舗数は約600店だったが、1000店規模に拡大するという。さらなる拡大に向けては「例えばユニーグループが活用している食品リサイクルループを使うなど連携をする必要がある」(谷田部氏)と指摘する。食品リサイクルループのさらなる拡大に向け汗を流す日々はしばらく続きそうだ。
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