原発再稼働に地元判断の壁 新潟県選挙で「知事リスク」伝染も
新潟県知事選で東京電力柏崎刈羽原発(同県)の再稼働に慎重な米山隆一氏が初当選したことで、原子力規制委員会の安全審査に合格しながら地元の判断で原発が動かせなくなる「知事リスク」が再び顕在化しそうだ。定期検査中の九州電力川内原発(鹿児島県)などにも影響が広がれば再稼働が一向に進まなくなり、中長期的なエネルギーの安定供給に支障をきたす恐れがある。
「今回の結果を見て、三反園(訓・鹿児島県)知事がどう反応するだろうか」。九電関係者は戦々恐々とする。
三反園知事は今年7月、「川内原発の停止」を公約に掲げ鹿児島県知事選で初当選すると、8月以降2度にわたり九電に川内原発の即時停止を要請した。知事に原発を止める法的権限はないため、九電は即時停止に応じなかったが、今後、新潟県知事選で意を強くした三反園知事が現在行われている特別点検で再び強硬姿勢に出ることを警戒する。
一方、柏崎刈羽6、7号機の安全審査は終盤に入っており、合格は早ければ来年の見通しだが、米山知事による地元同意が大きな壁となる可能性が高い。再稼働は東京電力ホールディングスの経営再建に不可欠。再稼働が遠のいたことで17日の東京株式市場では、再稼働による収益改善を見込んでいた投資家の売り注文が膨らみ、東電の株価終値は前週末比33円(7.9%)安の385円と急落した。
大手電力が規制委に新基準に基づく安全審査を申請した原発は26基で、現時点ではそのうち2基が運転中。政府は原発を重要なエネルギー源と位置付け、2030年度に電源比率に占める割合を2割強まで回復させる目標を掲げており、知事リスクが“伝染”すれば中長期的なエネルギー政策が土台から揺らぎかねない。経済産業省幹部は「知事の説得はどこの原発でも大きなネックになる。(新潟県のように)議論すらできない状況が全国に広がることは避けたい」と漏らす。
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