益子氏留任、三菱自再建の足かせにも ゴーン氏、慎重論はねのけ続投要請

 
会見後に握手する、三菱自動車の会長に就任が決まった日産自動車のカルロス・ゴーン社長(左)と、社長に留任する三菱自動車の益子修氏=20日、東京都港区(福島範和撮影)

 三菱自動車の益子修会長兼社長が日産自動車の傘下入り後も社長に留任するのは、日産のカルロス・ゴーン社長の強い要請があったためだ。益子氏は辞意を繰り返し伝えたが、ゴーン氏の信頼の厚い益子氏以外に適任はないとの説得に折れた。

 ただ、益子氏はこれまで進退について「新体制発足まで」と明言してきただけに、続投に対する批判が高まれば、再建に向けた重い足かせにもなりかねない。

 「燃費不正は三菱自独自の問題であり、自分たちの力で立て直さなければならない」。20日の会見で、益子氏は新体制発足後に退くとしていた社長にとどまる理由をこう説明した。

 益子氏は燃費不正問題に関する自身の経営責任について、「日産との提携や再発防止策の策定にめどがつき新経営体制が発足するまでが私の役割だ」と繰り返していた。

 9月以降、ゴーン氏から出資後の社長続投を再三要請されても、「退任したい」と固辞したという。しかし最終的にはゴーン氏の「個人的な感情は分かるが、株主の最大の利益のために残ってください」との言葉に、折れた。

 ゴーン氏が日産社内にあった慎重論をはねのけ、益子氏を社長に推したのは「ゴーン氏が三菱自の経営改革ばかりに取り組むわけにいかない」(関係者)という事情もあった。ゴーン氏は、三菱自の会長に就くことで、日産とルノーのトップの3つの役職を兼務することになる。三菱自の会長だけに専念するわけにはいかず、信頼して三菱自の経営を任せられる右腕が欠かせなかった。そこで、2010年に両社が軽自動車の共同開発で合意したときの交渉相手で「信頼できる」と認めあう益子氏に「私が強く要請した」(ゴーン氏)。

 益子氏の続投決定で、一連の不正問題で責任を取ったのは6月に引責辞任した相川哲郎社長と中尾龍吾副社長の2人にとどまった。4月の燃費データ不正問題の公表後、三菱自は益子氏主導で再発防止や意識改革に取り組んだのに、8月には燃費データの再測定で不正を重ねていたことも発覚している。そうした中で社長に留任することについて、益子氏は「批判はあると思う」とリスクを認めた。

 不正問題発覚後、三菱自の国内販売は大幅に減少しており、消費者離れに歯止めがかからない。さらに、今回の件で消費者から「トップが責任を取らない企業」とそっぽを向かれれば、信頼回復の道のりはさらに遠のく。(今井裕治)

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 ■三菱自動車の益子修氏の経営責任をめぐる発言

 ・「(燃費不正問題に関し)経営責任から逃れることはできない」(5月11日の会見)

 ・「私は新体制が誕生するまでの間、現職にとどまり課題の解決に取り組む」(5月18日の会見)

 ・「再発防止策の策定や日産自動車からの出資受け入れなどを踏まえ新しい体制に引き継ぐのが私の役割」(6月24日の株主総会)

 ・「再発防止策を進め、課題を整理して新しい体制に引き継いでいくことも私の責任だ」(8月2日の会見)

 ・「(燃費データの再測定でも不正を重ねていた問題で)責任を非常に重く受け止めている」(9月30日の会見)