石橋博史システム科学社長の処方箋

ホワイトカラー革命

 ■変革の意識・行動は「常に人が中心」

 ホワイトカラーの業務の進め方も転換の時を迎えつつある。ITの急速な進歩などで、AI(人工知能)の実用化に関するコンセプトを多くのメディアが伝えている。企業のバックオフィス(間接部門)へのAI活用、つまり「Business Process-AI(BP-AI=業務プロセス人工知能)」の視点から、業務プロセスの変革活動には何が必要かを考える。

 ◆見てわかる状態に

 現状の業務プロセスを効率良く運用していく管理点は、第1が現状のプロセス機能の可視化、第2は同機能の改善力、第3は同機能の定量化、第4は同機能の体系に基づく原単位化、第5は同機能の体系に基づく単位業務の管理点マニュアル化-の5つだ。これらを原動力として業務の姿を「目で見てわかる状態」にすると、システム・人・AIの役割を整理できる。

 全て業務は、既存の情報システムで効率良く処理可能な定常業務(ルーチンワーク)と、人が処理をしなければならない思考業務(非定常業務=思考、判断、決断を伴う業務)に区分けできる。10社の管理職578人と担当者2045人の計2323人にアンケートし、分析した結果、定常業務は約70%、思考業務は約30%だった。

 定常業務と違い、思考業務は属人性が高く、現状では多量の情報を読み解いていく時間が必要になっている。

 ◆現状踏まえAI活用

 AI活用によって未来型の思考業務(調査・研究・立案・企画・計画など)も、高精度かつスピーディーに効率良く処理できるようになる可能性は相当高まっている。まだ、実験段階だがさまざまな分野でAIがホワイトカラー業務の自動化や人の思考に寄与しはじめている。

 現状を踏まえてAI活用の基盤づくりをどのように想定し、業務の効率性を追求しながら実用化につなげていけるかを、現実的にユーザーが見極めていく必要がある。

 現状の業務を可視化して体系的に整理し、AIに移行する業務プロセス機能とデータを管理状態にしておく。その上で技術・ノウハウなど競争に勝てる専門性、業務の品質(Q)・原価(C)・納期(D=タイミング)のレベルアップのためのマネジメント、人材の多能化育成による幅広い専門性スキル向上のための仕組みなど、人が本来行うべき業務を明確にしておくことが重要だ。

 BP-AIは、ともすると以前のOA(オフィスオートメーション)化のように、人が不要になるような誤解を生じ、抵抗感が助長されやすい。情報化社会はITの進歩がもたらす心配ごとを生む社会とも言える。

 しかし、急速に進歩する時代の流れの中で見えてきたAIも、現状を変革しようとする活動の延長線上にあるもので、変革を行おうとする意識・行動のレベルこそ重視すべきである。

 一方、変革に対する考え方は多様であっていいが、「AIのために人がいる」のではなく、「人のためになるのがAI」であり、「常に人を中心に発展していくことが、社会の道理である」ということを基本とする意識・行動が求められる。(おわり)

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【プロフィル】石橋博史

 いしばし・ひろし 1962年、矢崎総業に入社。86年システム科学を設立し、現職。トヨタ生産方式や生産工学をもとにした業務革新の実践・支援ツール「HIT法」の開発、導入、コンサルティングを手掛ける。2010年2月、「業務プロセスの可視化法とチャート作成システム」で特許を取得。78歳。東京都出身。