「そごう神戸」買わずにいられなかった「阪急」…関西揺るがした10年前の“事件”彷彿

 
H2Oリテイリングに譲渡されることが決まった「そごう神戸店」=神戸市中央区

 よそに買われるくらいなら、うちで買ってしまえ-。そんな声が聞こえてきそうだ。阪急百貨店や阪神百貨店を運営するH2Oリテイリングが、セブン&アイ・ホールディングスから、そごう神戸店など百貨店3店舗を取得することで合意した。百貨店事業の不振に苦しんでいたセブン&アイからの申し出だったという。10年前、関西経済を揺るがしたあの“事件”での阪急グループの動きがオーバーラップする。

屈辱の地、神戸

 H2Oが取得するのは、そごう神戸店(神戸市)▽そごう西神店▽西武高槻店(大阪府高槻市)。業績が伸び悩んでおり、セブン&アイにはお荷物になりつつある。しかし、阪急・阪神のターミナル、三宮がある神戸は、H2Oにとって重要な地域だ。

 かつて神戸ハーバーランドにあった阪急百貨店は苦戦の末、撤退した。終盤は100円ショップをテナントに迎えるなど、なりふり構わぬてこ入れ策を講じたが、ブランドイメージを低下させてしまった。

 呉服店を祖業とするそごうは、バブル崩壊後に破綻したものの、阪急や阪神のような私鉄系百貨店よりも歴史あるのれんを掲げる。神戸店は、神戸・三宮の顔でもあり、かつては「地域一番店」だった。

 神戸では存在感の薄い阪急ブランド。そごう神戸店が他社に買われれば、神戸で阪急のプレゼンスを高める大きなチャンスを逃すことになる。

 阪急グループはかつて、苦しむライバルに救いの手を差し伸べ、呑み込んだことがある。

よそ者は入れない

 10年前、阪神電気鉄道は元通産官僚の村上世彰氏が率いる投資ファンド、通称「村上ファンド」の買収攻勢に追い詰められていた。

 村上氏は阪神電鉄の経営指標から弱点を見つけ、資産売却などによる経営効率化を迫っていた。そこに救いの手を差し伸べたのが、阪急電鉄を核とする阪急ホールディングス(HD、当時)だった。

 阪急HDは阪神電鉄と統合し阪急阪神HDとなり、阪急百貨店は阪急HDと資本関係が薄かったものの、歩調を合わせた。阪神電鉄から阪神百貨店を切り出して阪急百貨店とともに翌年設立した持ち株会社、H2Oリテイリングの傘下に置き、阪急東宝グループの大再編となった。

 両電鉄は梅田から神戸三宮まで路線が平行しており、両百貨店の旗艦店は梅田で競い合っている。統合しても効率化の余地は少なくメリットもさほど大きくはないとみられていた。

 だが、阪神が京阪、近鉄、南海といった他の私鉄と組むようなことになれば、阪急と阪神がそれぞれターミナルとする梅田に他社が乗り込んでくることになる。そうした事態を阪急が「嫌った」との見方は業界内で根強い。

◆均衡ある発展

 H2Oが取得するそごう神戸店の平成28年2月期の売上高は前期比1・5%増の467億円(平成28年2月期)。これに対し、現在の地域一番店である大丸神戸店は1・1%減だが850億円(同)。

 一方、阪急百貨店梅田本店の28年3月期の売上高は10・4%増の2183億円(28年3月期)。西日本の百貨店で首位。阪神百貨店梅田本店は建て替え中で、売り場面積は4割縮小したが589億円と17・6%減に踏みとどまっている。

 こうして数字を並べると梅田で売り上げを伸ばすために投資する方が、神戸に投資するよりも効率的にみえる。また神戸三宮駅で進む神戸阪急ビル東館の建て替え計画では、商業施設部分を拡張する。神戸のテコ入れは、阪急・阪神百貨店が阪神間に抱える顧客の流出を招きかねない。

 同時に取得するそごう西神店や西武高槻店は、訪日観光客需要もあまり期待できない郊外型で環境は厳しい。

 高槻から梅田、神戸まで「均衡ある発展」を実現できるか、関西で圧倒的とされる阪急阪神ブランドの底力が試される。